暗くなってきたので、三人はテントに戻り、ハリーが最初に見張りに立った。入口に座り、ハリーはリンボクの杖で足元の小石を浮上させようとした。しかしハリーの魔法は、相変わらず以前よりぎごちなく、効き目が弱いように思えた。ハーマイオニーはベッドに横たわって本を読んでいた。ロンはおどおどしながら、何度もちらちらとハーマイオニーのベッドを見上げていたが、やがてリュックサックから小さな木製のラジオを取り出し、周波しゅうは数すうを合わせはじめた。
「一局だけあるんだ」ロンは声を落としてハリーに言った。「ほんとのニュースを伝えてるところが。ほかの局は全部『例のあの人』側で、魔法省の受け売りさ。でもこの局だけは……聞いたらわかるよ。すごいんだから。ただ、毎晩は放送できないし、手て入いれがあるといけないから、しょっちゅう場所を変えないといけないんだ。それに、選局するにはパスワードが必要で……問題は、僕、最後の放送を聞き逃したから……」
ロンは小声で思いつくままの言葉をブツブツ言いながら、ラジオのてっぺんを杖で軽くトントン叩たたいた。何度もハーマイオニーを盗み見るのは、明らかに、ハーマイオニーが突然怒り出すのを恐れてのことだ。しかしハーマイオニーは、まるでロンなどそこにいないかのように、完全無視だった。十分ほど、ロンはトントンブツブツ、ハーマイオニーは本のページをめくり、ハリーはリンボクの杖の練習を続けていた。
やがてハーマイオニーが、ベッドから降おりてきた。ロンは、すぐさまトントンをやめた。
「君が気になるなら、僕、すぐやめる」ロンが、ピリピリしながら言った。
ハーマイオニーは、ロンにお応こたえ召めされず、ハリーに近づいた。
「お話があるの」ハーマイオニーが言った。ハリーは、ハーマイオニーがまだ手にしたままの本を見た。「アルバス・ダンブルドアの真っ白な人生と真っ赤な嘘うそ」だった。
「なに」ハリーは心配そうに聞いた。
その本にハリーに関する章があるらしいことが、ちらりと脳のう裏りを過よぎった。リータ版の自分とダンブルドアとの関係を、聞く気になれるかどうかハリーには自信がなかった。しかし、ハーマイオニーの答えは、まったく予想外のものだった。
「ゼノフィリウス・ラブグッドに、会いにいきたいの」
ハリーは目を丸くして、ハーマイオニーを見つめた。
「何て言った」
「ゼノフィリウス・ラブグッド。ルーナのお父さんよ。会って話がしたいの」
「あー――どうして」
ハーマイオニーは意を決したように、深呼吸してから答えた。
「あの印なの。『吟ぎん遊ゆう詩し人じんビードル』にある印。これを見て」