翌朝、風の強い丘きゅう陵りょう地ちに「姿すがた現わし」した三人は、オッタリー・セント・キャッチポール村が一望できる場所にいた。見晴らしのよい地点から眺ながめると、雲間から地上に斜めにかかった大きな光の架かけ橋はしの下で、村は、おもちゃの家が集まっているように見えた。三人は手をかざして「隠かくれ穴あな」のほうを見ながら、一分か二分、じっとたたずんだが、見えるのは高い生いけ垣がきと果か樹じゅ園えんの木だけだった。そういうもののおかげで、曲がりくねった小さな家は、マグルの目から安全に隠されていた。
「こんなに近くまで来て、家に帰らないのは変な感じだな」ロンが言った。
「あら、ついこの間、みんなに会ったばかりとは思えない言い方ね。クリスマスに家にいたくせに」ハーマイオニーが冷たく言った。
「『隠かくれ穴あな』なんかに、いやしないよ」ロンはまさか、という笑い方をした。「家に戻って、僕は君たちを見捨てて帰ってきました、なんて言えるか それこそ、フレッドやジョージは大喜びしただろうさ。それにジニーなんか、心底深い理解を示してくれたろうな」
「だって、それじゃ、どこにいたの」ハーマイオニーが驚いて聞いた。
「ビルとフラーの新しん居きょ。『貝かい殻がらの家いえ』だ。ビルは、いままでどんなときも僕をきちんと扱ってくれた。ビルは――ビルは僕のしたことを聞いて、感心はしなかったけど、くだくだ言わなかった。僕が本当に後悔してるってこと、ビルにはわかっていたんだ。ほかの家族は、僕がビルのところにいるなんて、誰も知らなかった。ビルがママに、クリスマスにはフラーと二人っきりで過ごしたいから、家には帰らないって言ったんだ。ほら、結婚してから初めての休暇きゅうかだし。フラーも別に、それでかまわなかったと思うよ。だって、セレスティナ・ワーベック嫌いだしね」
ロンは「隠れ穴」に背を向けた。
「ここを行ってみよう」ロンは丘の頂上を越える道を、先に立って歩いた。
三人は二、三時間歩いた。ハリーはハーマイオニーの強硬な意見により、「透とう明めいマント」に隠れていた。低い丘きゅう陵りょう地ちには、一軒の小さなコテージ以外は人家がなく、そのコテージにも人影がなかった。
「これが二人の家かしら。クリスマス休暇で出かけたんだと思う」
窓から覗のぞき込みながらハーマイオニーが言った。中はこざっぱりとしたキッチンで、窓辺にはゼラニウムが置いてある。ロンはフンと鼻を鳴らした。
「いいか、僕の直感では、ラブグッドの家なら、窓から覗けば一目でそれだとわかるはずだ。別な丘陵地を探そうぜ」
そこで三人は、そこから数キロ北へ「姿すがたくらまし」した。
「ハハーン」ロンが叫さけんだ。
風が三人の髪かみも服もはためかせていた。ロンは、三人が現れた丘のいちばん上を指差していた。そこに、世にも不思議な縦に長い家が、くっきりと空にそびえていた。巨大な黒い塔とうのような家の背後には、午後の薄明うすあかりの空に、ぼんやりとした幽ゆう霊れいのような月がかかっていた。
「あれがルーナの家に違いない。ほかにあんな家に住むやつがいるか 巨大な城だぜ」
「何言ってるの お城には見えないけど」ハーマイオニーが塔を見て顔をしかめた。
「城は城でもチェスの城ルークさ」ロンが言った。「どっちかって言うと塔だけどね」
窓から覗のぞき込みながらハーマイオニーが言った。中はこざっぱりとしたキッチンで、窓辺にはゼラニウムが置いてある。ロンはフンと鼻を鳴らした。
「いいか、僕の直感では、ラブグッドの家なら、窓から覗けば一目でそれだとわかるはずだ。別な丘陵地を探そうぜ」
そこで三人は、そこから数キロ北へ「姿すがたくらまし」した。
「ハハーン」ロンが叫さけんだ。
風が三人の髪かみも服もはためかせていた。ロンは、三人が現れた丘のいちばん上を指差していた。そこに、世にも不思議な縦に長い家が、くっきりと空にそびえていた。巨大な黒い塔とうのような家の背後には、午後の薄明うすあかりの空に、ぼんやりとした幽ゆう霊れいのような月がかかっていた。
「あれがルーナの家に違いない。ほかにあんな家に住むやつがいるか 巨大な城だぜ」
「何言ってるの お城には見えないけど」ハーマイオニーが塔を見て顔をしかめた。
「城は城でもチェスの城ルークさ」ロンが言った。「どっちかって言うと塔だけどね」