「しわしわ角づのスノーカックの角だが」ゼノフィリウスが言った。
「いいえ、違います」ハーマイオニーが言った。
「ハーマイオニー」ハリーは、ばつが悪そうに小声で言った。「いまはそんなことを――」
「でも、ハリー、あれはエルンペントの角つのよ 取引可能品目クラス、危険物扱いで、家の中に置くには危険すぎる品だわ」
「どうしてエルンペントの角だって、わかるんだ」
ロンは、身動きもままならないほど雑然とした部屋の中を、できるだけ急いで角から離れた。
「『幻まぼろしの動物とその生せい息そく地ち』に説明があるわ ラブグッドさん、すぐにそれを捨てないと。ちょっとでも触れたら爆発するかもしれないって、ご存知ぞんじではないんですか」
「しわしわ角づのスノーカックは」ゼノフィリウスは、てこでも動かない顔ではっきり言った。「恥ずかしがり屋で、高度な魔法生物だ。その角は――」
「ラブグッドさん、角の付け根に溝みぞが見えます。あれはエルンペントの角で、信じられないくらい危険なものです――どこで手に入れられたかは知りませんが――」
「買いましたよ」ゼノフィリウスは、誰が何と言おうと、という調子だった。
「二週間前、私がスノーカックというすばらしい生物に興味があることを知った、気持のよい若い魔法使いからだ。クリスマスにルーナをびっくりさせてやりたくてね。さて――」
ゼノフィリウスはハリーに向き直った。
「ミスター・ポッター、いったい、どういう用件で来られたのかな」
「助けていただきたいんです」ハーマイオニーがまた何か言い出す前に、ハリーは答えた。
「ああ、助けね。ふむ」ゼノフィリウスが言った。斜視しゃしでないほうの目が、またハリーの傷きず痕あとへと動いた。怯おびえながら、同時に魅み入いられているようにも見えた。
「そう。問題は……ハリー・ポッターを助けること……かなり危険だ……」
「ハリーを助けることが第一の義務だって、みんなに言っていたのはあなたじゃないですか」ロンが言った。「あなたのあの雑誌で」
ゼノフィリウスは、テーブルクロスに覆おおわれてもまだやかましく動いている印刷機をちらりと振ふり返った。
「あー――そうだ。そういう意見を表明してきた。しかし――」
「――ほかの人がすることで、あなた自身ではないってことですか」ロンが言った。
ゼノフィリウスは何も答えなかった。唾つばを何度も飲み込み、目が三人の間を素早く往いったり来たりした。ハリーは、ゼノフィリウスが心の中で何かもがいているような感じを受けた。