ゼノフィリウスは、ラッパ型補聴器のようなものを指差した。
「これはラックスパート吸い上げ管かんだ――思考する者の身近にあるすべての雑ざつ念ねんの源を取り除く。これは」こんどは小さな翼を指差した。「ビリーウィグのプロペラで、考え方や気分を高こう揚ようさせる。極きわめつきは」オレンジの蕪かぶを指していた。「スモモ飛行船だ。異常なことを受け入れる能力を高めてくれる」
ゼノフィリウスは、大おお股またで盆のほうに戻った。ハーマイオニーは、盆をごちゃごちゃしたサイドテーブルの一つに載のせて何とかバランスを保っていた。
「ガーディルートのハーブティーはいかがかな」ゼノフィリウスが勧すすめた。「自家製でね」
赤蕪かぶのような赤あか紫むらさき色いろの飲み物を注ぎながら、ゼノフィリウスが言葉を続けた。
「ルーナは『端はしの橋はし』の向こうにいる。君たちがいると聞いて興奮しているよ。おっつけ来るだろう。我々全員分のスープを作るぐらいのプリンピーを釣つっていたからね。さあ、掛かけて、砂糖は自分で入れてくれ」
「さてと――」ゼノフィリウスは、肘ひじ掛かけ椅い子すの上でぐらぐらしていた書類の山を降おろして腰掛け、ゴム長履ながばきの足を組んだ。「ミスター・ポッター、何をすればよいのかな」
「えーと」ハリーはちらりとハーマイオニーを見た。ハーマイオニーは、がんばれというようにうなずいた。「ラブグッドさん、ビルとフラーの結婚式に、あなたが首から下げていた印のことですけど。あれに、どういう意味があるのかをお聞きしたいのです」
ゼノフィリウスは、両方の眉まゆを吊つり上げた。
「『死しの秘宝ひほう』の印のことかね」