ハリーは、ロンとハーマイオニーを見たが、どちらも、ゼノフィリウスの言ったことが理解できなかったようだった。
「死しの秘宝ひほう」
「そのとおり」ゼノフィリウスが言った。「聞いたことがないのかね まあそうだろうね。信じている魔法使いはほとんどいない。君の兄さんの結婚式にいた、あの戯たわけた若者がいい証しょう拠こだ」ゼノフィリウスは、ロンに向かってうなずいた。「悪名高い闇やみの魔法使いの印を見せびらかしていると言って、私を攻撃した 無知も甚はなはだしい。秘宝には闇の『や』の字もない――少なくとも、一般的に使われている単純な闇の意味合いはない。あのシンボルは、ほかの信しん奉ぽう者しゃが『探求たんきゅう』を助けてくれることを望んで、自分が仲間であることを示すために使われるだけのことだ」
ゼノフィリウスは、ガーディルートのハーブティーに角砂糖を数個入れてかき回し、一口飲んだ。
「すみませんが」ハリーが言った。「僕には、まだよくわかりません」
ハリーも失礼にならないようにと一口飲んだが、ほとんど吐はき出すところだった。鼻くそ味の百味ひゃくみビーンズを液体にしたような、むかむかするひどい味だ。
「そう、いいかね、信奉者たちは、『死の秘宝』を求めているのだ」
ゼノフィリウスは、ガーディルート・ティーがいかにもうまいとばかりに、舌鼓したつづみを打った。
「でも、『死の秘宝』って、いったい何ですか」ハーマイオニーが聞いた。
ゼノフィリウスは、空からになったカップを横に置いた。
「君たちは、『三さん人にん兄きょう弟だいの物語ものがたり』をよく知っているのだろうね」
ハリーは「いいえ」と言ったが、ロンとハーマイオニーは同時に「はい」と言った。
ゼノフィリウスは重々しくうなずいた。
「さてさて、ミスター・ポッター、すべては『三人兄弟の物語』から始まる……どこかにその本があるはずだが……」ゼノフィリウスは漠ばく然ぜんと部屋を見回し、羊よう皮ひ紙しや本の山に目をやったが、ハーマイオニーが「ラブグッドさん、私がここに持っています」と言った。
そしてハーマイオニーは、小さなビーズバッグから「吟ぎん遊ゆう詩し人じんビードルの物語」を引っ張り出した。
「原げん書しょかね」ゼノフィリウスが鋭く聞いた。ハーマイオニーがうなずくと、「さあ、それじゃ、声を出して読んでみてくれないか みんなが理解するためには、それがいちばんよい」とゼノフィリウスが言った。
「あっ……わかりました」ハーマイオニーは、緊張きんちょうしたように答えて本を開いた。ハーマイオニーが小さく咳せき払ばらいして読みはじめたとき、ハリーはそのページのいちばん上に、自分たちが調べている印がついているのに気づいた。