「ラブグッドさん」ハーマイオニーがもう一度聞いた。「『透とう明めいマント』の類たぐいが存在することは、私たち三人とも知っています。めずらしい品ですが、存在します。でも――」
「ああ、しかし、ミス・グレンジャー、三番目の秘宝は本物の『透明マント』なのだ つまり、旅行用のマントに『目くらまし術じゅつ』をしっかり染み込ませたり、『眩げん惑わくの呪のろい』をかけたりした品じゃないし、葉隠れ獣デミガイズの毛で織ったものでもない。この織おり物ものは、はじめのうちこそ隠してくれるが、何年か経たつと色褪いろあせて半透明になってしまう。本物のマントは、着ると間違いなく完全に透明にしてくれるし、永久に長持ちする。どんな呪じゅ文もんをかけても見通せないし、いつも間違いなく隠してくれる。ミス・グレンジャー、そういうマントをこれまで何枚見たかね」
ハーマイオニーは答えようとして口を開いたが、ますます混乱したような顔でそのまま閉じた。ハリーたち三人は顔を見合わせた。ハリーは、みなが同じことを考えていると思った。この瞬間しゅんかん、ゼノフィリウスがたったいま説明してくれたマントと寸すん分ぶん違たがわぬ品が、この部屋に、しかも自分たちの手にある。
「そのとおり」
ゼノフィリウスの声は、論理的に三人を言い負かしたというような調子だった。
「君たちはそんな物を見たことがない。持ち主はそれだけで、計はかり知しれないほどの富を持つと言えるだろう。違うかね」
ゼノフィリウスは、また窓の外をちらりと見た。空はうっすらとピンクに色づいていた。
「それじゃ」ハーマイオニーは落ち着きを失っていた。「その『マント』は実在するとしましょう……ラブグッドさん、石のことはどうなるのですか あなたが『蘇よみがえりの石』と呼ばれた、その石は」
「どうなるとは、どういうことかね」
「あの、どうしてそれが現実のものだと言えますか」
「そうじゃないと証明してごらん」ゼノフィリウスが言った。
ハーマイオニーは憤ふん慨がいした顔をした。
「そんな――失礼ですが、そんなこと愚ぐの骨頂こっちょうだわ 実在しないことをいったいどうやって証明できるんですか たとえば、私が石を――世界中の石を集めてテストすればいいとでも つまり、実在を信ずる唯ゆい一いつの根こん拠きょが、その実在を否定できないということなら、何だって実在すると言えるじゃないですか」
「そう言えるだろうね」ゼノフィリウスが言った。「君の心が少し開いてきたようで、喜ばしい」
「それじゃ、『ニワトコの杖つえ』は」ハーマイオニーが反論する前に、ハリーが急いで聞いた。「それも実在すると思われますか」