またしても窓の外に目を走らせると、ゼノフィリウスは立ち上がって盆を取り上げ、螺ら旋せん階かい段だんに向かった。
「夕食を食べていってくれるだろうね」再び階下に姿を消したゼノフィリウスの声が聞こえた。「誰でも必ず、川プリンピースープのレシピを聞くんだよ」
「たぶん、聖せいマンゴの中毒ちゅうどく治療ちりょう科かに見せるつもりだぜ」ロンがこっそり言った。
ハリーは、下のキッチンでゼノフィリウスが動き回る音が聞こえてくるのを待って、口を開いた。
「どう思う」ハリーはハーマイオニーに聞いた。
「ああ、ハリー」ハーマイオニーはうんざりしたように言った。「ばかばかしいの一言よ。あの印の本当の意味が、こんな話のはずはないわ。ラブグッド独特のへんてこな解釈かいしゃくにすぎないのよ。時間のむだだったわ」
「『しわしわ角づのスノーカック』を世に出したやつの、いかにも言いそうなことだぜ」ロンが言った。
「君も信用していないんだね」ハリーが聞いた。
「ああ、あれは、子どもたちの教訓きょうくんになるようなお伽噺とぎばなしの一つだろ 『君くん子し危あやうきに近寄らず、喧嘩けんかはするな、寝た子を起こすな 目立つな、余計なお節介せっかいをやくな、それで万事オッケー』。そう言えば――」ロンが言葉を続けた。「ニワトコの杖つえが不幸を招くって、あの話から来てるのかもな」
「何の話だ」
「迷めい信しんの一つだよ。『真夏まなつ生まれの魔女は、マグルと結婚する』、『朝あしたに呪のろえば、夕ゆうべには解とける』『ニワトコの杖、永とこ久しえに不幸』。聞いたことがあるはずだ。僕のママなんか、迷信どっさりさ」
「ハリーも私も、マグルに育てられたのよ」ハーマイオニーがロンの勘違かんちがいを正した。「私たちの教えられた迷信は違うわ」
そのときキッチンからかなりの刺し激げき臭しゅうが漂ってきて、ハーマイオニーは深いため息をついた。ゼノフィリウスにいらいらさせられたおかげで、ハーマイオニーがロンへのいらだちを忘れてしまったのは、幸いだった。
「あなたの言うとおりだと思うわ」ハーマイオニーがロンに話しかけた。「単なる道徳話なのよ。どの贈り物がいちばんよいかは明白だわ。どれを選ぶべきかと言えば――」
三人が同時に声を出した。ハーマイオニーは「マント」、ロンは「杖」、そしてハリーは「石」と言った。
三人は、驚きとおかしさが半々で顔を見合わせた。