「『マント』と答えるのが正解だろうとは思うけど」ロンがハーマイオニーに言った。「でも、杖があれば、透とう明めいになる必要はないんだ。『無敵むてきの杖』だよ、ハーマイオニー、しっかりしろ」
「僕たちにはもう、『透明マント』があるんだ」ハリーが言った。
「それに、私たち、それにずいぶん助けられたわ。お忘れじゃないでしょうね」ハーマイオニーが言った。「ところが杖は、間違いなく面倒を引き起こす運命――」
「――大声で宣伝すれば、だよ」ロンが反論した。「間抜けならってことさ。杖を高々と掲かかげて振り回しながら踊おどり回って、歌うんだ。『無敵の杖を持ってるぞ、勝てると思うならかかってこい』なんてさ。口にチャックしておけば――」
「ええ、でも口にチャックしておくなんて、できるかしら」ハーマイオニーは疑わしげに言った。「あのね、ゼノフィリウスの話の中で、真実はたった一つ、何百年にもわたって、強力な杖つえに関するいろいろの話があったということよ」
「あったの」ハリーが聞いた。
ハーマイオニーはひどくいらだった顔をしたが、それがいかにもハーマイオニーらしくて憎めない顔だったので、ハリーとロンは顔を見合わせてにやりとした。
「『死の杖』、『宿命しゅくめいの杖』、そういうふうに名前の違う杖が、何世紀にもわたってときどき現れるわ。たいがい闇やみの魔法使いの持つ杖で、持ち主が杖の自慢じまんをしているの。ビンズ先生が何度かお話されたわ――でも――ええ、すべてナンセンス。杖の力は、それを使う魔法使いの力次第ですもの。魔法使いの中には、自分の杖がほかのより大きくて強いなんて、自慢したがる人がいるというだけよ」
「でも、こうは考えられないか」ハリーが言った。「そういう杖は――『死の杖』とか『宿命の杖』だけど――同じ杖が、何世紀にもわたって、名前を変えて登場するって」
「おい、そいつらは全部、『死』が作った本物の『ニワトコの杖』だってことか」ロンが言った。
ハリーは笑った。ふと思いついた考えだったが、結局、ありえないと思ったからだ。ヴォルデモートに空中追つい跡せきされたあの晩、ハリーの杖が何をしたにしても、あの杖は柊ひいらぎでニワトコではなかったし、オリバンダーが作った杖だ。ハリーはそう自分に言い聞かせた。それに、もしハリーの杖が無敵だったのなら、折れてしまうわけがない。
「それじゃ、君はどうして石を選ぶんだ」ロンがハリーに聞いた。
「うーん、もしそれで呼び戻せるなら、シリウスも……マッド‐アイも……ダンブルドアも……僕の両親も……」
ロンもハーマイオニーも笑わなかった。