ルーナは部屋の天井を、すばらしい絵で飾かざっていた。ハリー、ロン、ハーマイオニー、ジニー、ネビルの五人の顔の絵だ。ホグワーツの絵のように動いたりはしなかったが、それにもかかわらず、絵には魔法のような魅力みりょくがあった。ハリーには、五人が息をしているように思えた。絵の周りに細かい金の鎖が織り込んであり、五人をつないでいる。しばらく絵を眺ながめていたハリーは、その鎖が実は、金色のインクで同じ言葉を何度も何度も繰り返し描いたものだと気づいた。
ともだち……ともだち……ともだち……
ハリーはルーナに対して、熱いものが一気にあふれ出すのを感じた。ハリーは部屋を見回した。ベッドの脇わきに大きな写真があり、小さいころのルーナと、ルーナそっくりの顔をした女性が抱き合っている。この写真のルーナは、ハリーがこれまで見てきたどのルーナよりも、きちんとした身なりをしていた。写真は埃ほこりを被かぶっていた。何だか変だ。ハリーは周りをよく見た。
何かがおかしい。淡い水色の絨毯じゅうたんには埃が厚く積もっている。洋よう服ふく箪だん笥すには一着も服がないし、ドアが半開きのままだ。ベッドは冷えてよそよそしく、何週間も人の寝た気配がない。いちばん手近の窓には、真っ赤に染まった空を背景に、クモの巣が一つ張っている。
「どうかしたの」
ハリーが下りていくと、ハーマイオニーが聞いた。しかし、ハリーが答える前に、ゼノフィリウスがキッチンから上がってきた。こんどはスープ皿を載のせた盆を運んできた。
「ラブグッドさん。ルーナはどこですか」ハリーが聞いた。
「何かね」
「ルーナはどこですか」
ゼノフィリウスは、階段のいちばん上で、はたと止まった。
「さ――さっきから言ってるとおりだ。『端はしの橋はし』でプリンピー釣づりをしている」
「それじゃ、なぜお盆に四人分しかないんですか」
ゼノフィリウスは口を開いたが、声が出てこなかった。相変わらず聞こえてくる印刷機のバタバタという騒音と、ゼノフィリウスの手の震えでカタカタ鳴る盆の音だけが聞こえた。
「ルーナは、もう何週間もここにはいない」ハリーが言った。「洋服はないし、ベッドには寝た跡あとがない。ルーナはどこですか それに、どうしてしょっちゅう窓の外を見るんですか」