ハリーはあえぎながら草の上に落ち、ようやく立ち上がった。三人は、夕暮れのどこか草原の一いっ角かくに着地したようだった。ハーマイオニーはもう杖つえを振り、周りに円を描いて走っていた。
「プロテゴばんぜんの トタラムまもり……サルビオのろいを ヘクシアさけよ……」
「あの裏切り者 老いぼれの悪党」ロンはゼイゼイ言いながら「透とう明めいマント」を脱いで現れ、マントをハリーに放り投げた。「ハーマイオニー、君って天才だ。大天才だ。あそこから逃げおおせたなんて、信じられないよ」
「カてーきベを イニミカムけいかいせよ……だから、エルンペントの角つのだって言ったでしょう あの人にちゃんと教えてあげたのに――。結局、あの人の家は吹き飛んでしまったじゃない」
「罰ばちが当たったんだ」
ロンは、破れたジーンズと両足の切り傷きずを調べながら言った。
「連中は、あいつをどうすると思う」
「あぁ、殺したりしなければいいんだけど」ハーマイオニーがうめいた。「だから、あそこを離れる前に、死し喰くい人びとたちにハリーの姿をちらとでも見せたかったの。そしたら、ゼノフィリウスが嘘うそをついていたんじゃないってわかるから」
「だけど、どうして僕を隠したんだ」ロンが聞いた。
「ロン、あなたは黒こく斑はん病びょうで寝ていることになってるの 死喰い人は、父親がハリーを支持しているからって、ルーナをさらったのよ あなたがハリーと一いっ緒しょにいるのを見たら、あの人たちが、あなたの家族に何をするかわからないでしょう」
「だけど、君のパパやママは」
「オーストラリアだもの」ハーマイオニーが言った。「大丈夫なはずよ。二人は何も知らないわ」
「君って天才だ」ロンは感かん服ぷくしきった顔で繰り返した。
「うん、ハーマイオニー、天才だよ」ハリーも心から同意した。「君がいなかったら、僕たちどうなっていたかわからない」
ハーマイオニーはにっこりしたが、すぐに真顔まがおになった。
「ルーナはどうなるのかしら」
「うーん、あいつらの言ってることが本当で、ルーナがまだ生きてるとすれば――」
ロンが言いかけた。
「やめて、そんなこと言わないで」ハーマイオニーが金切かなきり声ごえを上げた。「ルーナは生きてるはずよ。生きていなくちゃ」
「それならアズカバンにいる、と思うな」ロンが言った。「だけど、あそこで生き延のびられるかどうか……大勢がだめになって……」
「ルーナは生き延びる」
ハリーが言った。そうではない場合を考えることさえ耐たえられなかった。
「ルーナはタフだ。僕たちが考えるよりずっと強い。たぶん、監かん獄ごくに囚とらわれている人たちに、ラックスパートとかナーグルのことを教えているよ」
「そうだといいけど」ハーマイオニーは手で目を拭ぬぐった。「ゼノフィリウスがかわいそうだわ。もし――」
「もし、あいつが、僕たちを死し喰くい人びとに売ろうとしていなかったらな。うん」ロンが言った。