三人はテントを張って中に入り、ロンが紅茶を入れた。九死に一生を得たあとは、こんな寒々とした黴かび臭くさい古い場所でも、安全でくつろげる居心地のよい家庭のようだった。
「ああ、私たち、どうしてあんなところへ行ったのかしら」
しばらく沈ちん黙もくが続いたあと、ハーマイオニーがうめくように言った。
「ハリー、あなたが正しかったわ。ゴドリックの谷の二の舞まいだった。まったく時間のむだ 『死しの秘宝ひほう』なんて……くだらない……でも、ほんとは――」ハーマイオニーは何か急に閃ひらめいたらしい。「全部あの人の作り話なんじゃないかしら ゼノフィリウスは、たぶん『死の秘宝』なんてまったく信じていないんだわ。死喰い人たちが来るまで、私たちに話をさせておきたかっただけよ」
「それは違うと思うな」ロンが言った。「緊張きんちょうしているときにでっち上げ話をするなんて、意外と難しいんだ。『人さらい』に捕まったとき、僕にはそれがわかったよ。スタンのふりをするほうが、まったく知らない誰かをでっち上げるよりずっと簡単だった。だって、少しはスタンのことを知っているからね。ラブグッド爺じいさんも、僕たちを足止めしようとして、ものすごくプレッシャーがかかってたはずだ。僕たちをしゃべらせておくために、あいつは本当のことを言ったと思うな。でなきゃ、本当だと思っていることをね」
「まあね、それはどっちでもいいわ」ハーマイオニーはため息をついた。「ゼノフィリウスが正直な話をしていたにしても、あんなでたらめだらけの話は聞いたことがないわ」
「でも、待てよ」ロンが言った。「『秘密ひみつの部へ屋や』だって、伝説上のものだと思われてたんじゃないか」
「でも、ロン、『死の秘宝』なんて、ありえないわ」