ハリーはじっと闇を見つめた……もしヴォルデモートが「死の秘宝」のことを知っていたなら、間違いなくそれを求め、手に入れるためには何でもしたのではないだろうか 所有者を、死を制する者にする三つの品なのだ。「死の秘宝」のことを知っていたなら、ヴォルデモートははじめから「分ぶん霊れい箱ばこ」など必要としなかっただろう。秘宝の一つを手に入れながら、それを分霊箱にしてしまったという単純な事実を見ても、魔法界のこの究きゅう極きょくの秘密を、ヴォルデモートが知らなかったことは明らかなのではないだろうか
そうだとすれば、ヴォルデモートは「ニワトコの杖つえ」の持つ力を、完全には知らずに探していることになる。三つの品の一つだということを知らずに……杖は隠すことができない秘宝ひほうだから、その存在はもっともよく知られている……「ニワトコの杖」の血の軌跡きせきは、魔法史のページに点々と残っている……。
ハリーは曇くもった夜空を見上げた。くすんだ灰色と銀色の雲の曲線が、白い月の面おもてをなでていた。ハリーは自分の発見したことに驚き、頭がぼーっとなっていた。
ハリーはテントの中に戻った。ロンとハーマイオニーが、さっきとまったく同じ場所に立っているのを見て、ハリーはひどく驚いた。ハーマイオニーはまだリリーの手紙を持ち、ロンはその横で、少し心配そうな顔をしていた。この数分間に、自分たちがどれほど遠くまでやって来たかに、二人は気づいていないのだろうか
「こういうことなんだ」ハリーは、自分でも驚くほどの確信の光の中に、二人を引き入れようとした。「これですべて説明がつく。『死の秘宝』は実在する。そして僕はその一つを持っている――二つかもしれない――」
ハリーはスニッチを掲かかげた。
「――そして『例のあの人』は三番目を追っている。ただし、あいつはそれを知らない……強力な杖だと思っているだけだ――」
「ハリー」ハーマイオニーはハリーに近づき、リリーの手紙を返しながら言った。「気の毒だけど、あなたは勘かん違ちがいしているわ。何もかも勘違い」
「でも、どうして これで全部辻つじ褄つまが――」
「いいえ、合わないわ」ハーマイオニーが言った。「合わないのよ、ハリー。あなたはただ夢中になっているだけ。お願いだから――」
ハーマイオニーは、口を開きかけたハリーを止めた。
「お願いだから、答えて。もしも『死の秘宝』が実在するのなら、そしてダンブルドアがそれを知っていたのなら、三つの品を所持するものが死を制すると知っていたのなら――ハリー、どうしてそれをあなたに話さなかったの どうして」
ハリーは、答える準備じゅんびができていた。
「だって、ハーマイオニー、君が言ったじゃないか。自分で見つけなければいけないことだって これは『探求たんきゅう』なんだ」
「でも私は、ラブグッドのところに行くようにあなたを説得したくて、そう言ったにすぎないのよ」ハーマイオニーは、極度きょくどにいらいらした声で叫さけんだ。「そう信じていたわけじゃないわ」
ハリーはあとに引かなかった。