「ダンブルドアはいつも、僕自身に何かを見つけ出させた。自分の力を試し、危険を冒おかすようにしむけた。こんどのことも、ダンブルドアらしいやり方だという感じがするんだ」
「ハリー、これはゲームじゃないのよ。練習じゃないわ 本番なのよ。ダンブルドアはあなたにはっきりした指示を遺のこしたわ。分ぶん霊れい箱ばこを見つけ出して壊こわせと あの印は何の意味もないわ。『死しの秘宝ひほう』のことは忘れてちょうだい。寄り道している暇ひまはないの――」
ハリーはほとんど聞いていなかった。スニッチが開いて「蘇よみがえりの石」が現れ、ハーマイオニーに自分が正しいことを、そして「死の秘宝」が実在することを証明してくれないかと、半なかば期待しながら、ハリーはスニッチを手の中で何度もひっくり返していた。
ハーマイオニーはロンに訴うったえた。
「あなたは信じないでしょう」
ハリーは顔を上げた。ロンはためらっていた。
「わかんないよ……だって……ある程度、合ってるところもあるし」ロンは答えにくそうだった。「だけど全体として見ると……」ロンは深く息を吸った。「ハリー、僕たちは分霊箱をやっつけることになっていると思う。ダンブルドアが僕たちに言ったのは、それだ。たぶん……たぶん、この秘宝のことは忘れるべきだろう」
「ありがとう、ロン」ハーマイオニーが言った。「私が最初に見張りに立つわ」
そしてハーマイオニーは、ハリーの前を意い気き揚よう々ようと通り過ぎ、テントの入口に座り込んで、この件にぴしゃりと終しゅう止し符ふを打った。
しかしハリーは、その晩、ほとんど眠れなかった。「死の秘宝」にすっかり取とり憑つかれ、その考えが心を揺ゆり動かし、頭の中で渦巻うずまいているうちは気が休まらなかった。杖つえ、石、そしてマント。そのすべてを所有できさえすれば……。
私は終わるときに開く……でも終わるときって、何だ どうして、いますぐ石が手に入らないんだ 石さえあれば、ダンブルドアに直接、こういう質問ができるのに……そしてハリーは、暗い中でスニッチに向かってブツブツと呪じゅ文もんを唱となえてみた。できることは全部やってみた。蛇語へびごも試したが、金こん色じきの球たまは開こうとしない……。