沈ちん黙もくの時間だった。ハリー、ロン、ハーマイオニーは言葉もなかった。ハリーは、もっと聞きたい気持と、これ以上聞くのが恐ろしいという気持が半々だった。外部の世界と完全につながっていると感じたのは、久しぶりのことだった。
「ありがとうございました」リーの声が言った。「さてこんどは、レギュラーのお一人に、新しい魔法界の秩ちつ序じょがマグルの世界に与えている影響について、最新の情報をうかがいましょう。ロイヤル、どうぞ」
「ありがとう、リバー」
すぐそれとわかる、深い低音の、抑よく制せいのあるゆったりした安心感を与える声だ。
「キングズリー」ロンが思わず口走った。
「わかってるわ」ハーマイオニーがロンを黙だまらせた。
「マグルたちは、死傷者が増え続ける中で、被害ひがいの原因をまったく知らないままです」キングズリーが言った。「しかし、魔法使いも魔女も、身の危険を冒おかしてまで、マグルの友人や隣りん人じんを守ろうとしているという、まことに心動かされる話が次々と耳に入ってきます。往おう々おうにしてマグルはそれに気づかないことが多いのですが。ラジオをお聞きの皆さんには、たとえば近所に住むマグルの住居に保ほ護ご呪じゅ文もんをかけるなどして、こうした模も範はん的てきな行為こういに倣ならうことを強く呼びかけたいと思います。そのような簡単な措そ置ちで、多くの命が救われることでしょう」
「しかし、ロイヤル、このように危険な時期には『魔法使い優先』、と答えるラジオ聴ちょう取しゅ者しゃの皆さんに対しては、どのようにおっしゃるつもりですか」リーが聞いた。
「『魔法使い優先』は、たちまち『純血じゅんけつ優先』に結びつき、さらに『死し喰くい人びと』につながるものだと申し上げましょう」キングズリーが答えた。「我々はすべて人です。そうではありませんか すべての人の命は同じ重さを持ちます。そして、救う価値があるのです」
「すばらしいお答えです、ロイヤル。現在のごたごたから抜け出した暁あかつきには、私はあなたが魔法大臣になるよう一票を投じますよ」リーが言った。「さて、次はロムルスにお願いしましょう。人気特別番組の『ポッター通つう信しん』です」
「ありがとう、リバー」
これもよく知っている声だった。ロンは口を開きかけたが、ハーマイオニーが囁ささやき声で封ふうじた。
「ルーピンだってわかるわよ」
「ロムルス、あなたは、この番組に出ていただくたびに同じことを繰り返していらっしゃいますが、ハリー・ポッターはまだ生きているというご意見ですね」
「そのとおりです」ルーピンがきっぱりと言った。「もしハリーが死んでいれば、死し喰くい人びとたちが大々的にその死を宣言するであろうと確信しています。なぜならば、それが新体制に抵てい抗こうする人々の士気に、致ち命めい的てきな打撃だげきを与えるからです。『生き残った男の子』は、いまでも、我々がそのために戦っているあらゆるもの、つまり、善ぜんの勝利、無む垢くの力、抵抗し続ける必要性などの象しょう徴ちょうなのです」
ハリーの胸に、感謝と恥ずかしさが湧わき上がってきた。最後にルーピンに会ったとき、ハリーはひどいことを言った。ルーピンは、それを許してくれたのだろうか