「ローデント」
また聞き覚えのある声だ。ハリー、ロン、ハーマイオニーはいっせいに叫さけんだ。
「フレッド」
「いや――ジョージかな」
「フレッド、だと思う」ロンが耳をそばだてて言った。双子ふたごのどちらかが話した。
「俺おれはローデントじゃないぜ、冗談じょうだんじゃない。『レイピア、諸刃もろはの剣つるぎ』にしたいって言ったじゃないか」
「ああ、わかりました。ではレイピア、『親玉死喰い人』についていろいろ耳に入ってくる話に関する、あなたのご見けん解かいをいただけますか」
「承知しました、リバー」フレッドが言った。「ラジオをお聞きの皆さんはもうご存知ぞんじでしょうが、もっとも、庭の池の底とかその類たぐいの場所に避難ひなんしていれば別ですが、『例のあの人』が表に出ないという影の人物戦術せんじゅつは、相変わらずちょっとした恐きょう慌こう状じょう態たいを作り出しています。いいですか、『あの人』を見たという情報じょうほうがすべて本当なら、優ゆうに十九人もの『例のあの人』がそのへんを走り回っていることになりますね」
「それが彼の思うつぼなのだ」キングズリーが言った。「謎なぞに包まれているほうが、実際に姿を現すよりも大きな恐怖きょうふを引き起こす」
「そうです」フレッドが言った。「ですから、皆さん、少し落ち着こうではないですか。状況はすでに十分悪いんですから、これ以上妄もう想そうをふくらませなくてもいい。たとえば、『例のあの人』はひとにらみで人を殺すという新しいご意見ですが、皆さん、それはバジリスクのことですよ。簡単なテストが一つ。こっちをにらんでいるものに脚あしがあるかどうかを見てみましょう。もしあれば、その目を見ても安全です。もっとも、相手が本物の『例のあの人』だったら、どっちにしろ、それがこの世の見納みおさめになるでしょう」
ハリーは声を上げて笑った。ここ何週間もなかったことだ。ハリーは、重苦しい緊張きんちょうが解とけていくのを感じた。
「ところで、『あの人』を海外で見かけたという噂うわさはどうでしょう」リーが聞いた。
「そうですね。『あの人』ほどハードな仕事ぶりなら、そのあとで、ちょっとした休暇きゅうかがほしくなるんじゃないでしょうか」フレッドが答えた。「要はですね、『あの人』が国内にいないからといって、間違った安心感に惑まどわされないこと。海外かもしれないし、そうじゃないかもしれない。どっちにしろ、『あの人』がその気になれば、その動きの素早さときたら、シャンプーを目の前に突きつけられたセブルス・スネイプでさえ敵かなわないでしょうね。だから、危険を冒おかして何かしようと計画している方は、『あの人』が遠くにいることを当てにしないように。こんな言葉が自分の口から出るのを聞こうとは思わなかったけど、『安全第一』」
「レイピア、賢けん明めいなお言葉をありがとうございました」リーが言った。
「ラジオをお聞きの皆さん、今日の『ポッターウオッチ』は、これでお別れの時間となりました。次はいつ放送できるかわかりませんが、必ず戻ります。ダイヤルを回し続けてください。次のパスワードはマッド‐アイです。お互いに安全でいましょう。信しん頼らいを持ち続けましょう。では、おやすみなさい」
「レイピア、賢けん明めいなお言葉をありがとうございました」リーが言った。
「ラジオをお聞きの皆さん、今日の『ポッターウオッチ』は、これでお別れの時間となりました。次はいつ放送できるかわかりませんが、必ず戻ります。ダイヤルを回し続けてください。次のパスワードはマッド‐アイです。お互いに安全でいましょう。信しん頼らいを持ち続けましょう。では、おやすみなさい」