「……魔法省へ行くか」
「魔法省なんぞクソ食らえだ」グレイバックがうなった。「あいつらは自分の手柄てがらにしちまうぞ。俺たちは何の分け前にも与あずかれない。俺たちが『例のあの人』に直接渡すんだ」
「『あのいひと』を呼び出すのか ここに」スカビオールの声は恐れおののいていた。
「違う」グレイバックが歯は噛がみした。「俺にはそこまで――『あの人』は、マルフォイのところを基き地ちにしていると聞いた。こいつをそこに連れていくんだ」
ハリーは、グレイバックがなぜヴォルデモートを呼び出さないか、わかるような気がした。狼おおかみ人にん間げんは、死し喰くい人びとが利用したいときだけそのローブを着ることを許されはするが、闇やみの印しるしを刻印こくいんされるのはヴォルデモートの内輪うちわの者だけで、グレイバックはその最高の名誉めいよまでは受けていないのだ。
ハリーの傷痕きずあとがまたしても疼うずいた――。
……そして自分は、夜の空を、塔のいちばん上の窓まで、まっすぐに飛んでいった――
「……こいつが本人だってぇのは本当に確かか もしまちげえでもしたら、グレイバック、俺たちゃ死ぬ」
「指し揮きを執とってるのは誰だ」
グレイバックは、一瞬いっしゅんの弱腰を挽回ばんかいすべく、吠ほえ声を上げた。
「こいつはポッターだと、俺おれがそう言ってるんだ。ポッターとその杖、それで即座そくざに二十万ガリオンだ しかしお前ら、どいつも、一緒いっしょに来る根性がなけりゃあ、賞金しょうきんは全部俺のもんだ。うまくいけば、小娘のおまけもいただく」
……窓は黒い石に切れ目が入っているだけで、人一人通れる大きさではない……骸骨がいこつのような姿が、隙間すきまから辛かろうじて見える。毛布を被かぶって丸まっている……死んでいるのか、それとも眠っているのか……
「よし」スカビオールが言った。「よーし、乗った どっこい、ほかのやつらは――グレイバック、ほかのやつらをどうする」
「いっそまとめて連れていこう。『穢けがれた血ち』が二人、それで十ガリオン追加だ。その剣も俺によこせ。そいつらがルビーなら、それでまたひと儲もうけだ」
捕虜ほりょたちは、引っ張られて立ち上がった。ハリーの耳に、ハーマイオニーの怯おびえた荒い息遣いきづかいが聞こえた。
「つかめ。しっかりつかんでろよ。俺がポッターをやる」
グレイバックはハリーの髪かみの毛を片手でむんずとつかんだ。ハリーは、長い黄色い爪つめが頭皮を引っかくのを感じた。
「三つ数えたらだ いち――に――さん――」
一味は、捕虜を引き連れて「姿くらまし」した。ハリーはグレイバックの手を振り離そうともがいたが、どうにもならなかった。ロンとハーマイオニーが両脇りょうわきにきつく押しつけられていて、自分一人だけ離れることはできなかった。息ができないほど肺がしぼられ、傷痕きずあとはいっそうひどく痛んだ――。
捕虜ほりょたちは、引っ張られて立ち上がった。ハリーの耳に、ハーマイオニーの怯おびえた荒い息遣いきづかいが聞こえた。
「つかめ。しっかりつかんでろよ。俺がポッターをやる」
グレイバックはハリーの髪かみの毛を片手でむんずとつかんだ。ハリーは、長い黄色い爪つめが頭皮を引っかくのを感じた。
「三つ数えたらだ いち――に――さん――」
一味は、捕虜を引き連れて「姿くらまし」した。ハリーはグレイバックの手を振り離そうともがいたが、どうにもならなかった。ロンとハーマイオニーが両脇りょうわきにきつく押しつけられていて、自分一人だけ離れることはできなかった。息ができないほど肺がしぼられ、傷痕きずあとはいっそうひどく痛んだ――。