「ハーマイオニー」
ロンが大声を上げ、縛られているロープを振りほどこうと身もだえしはじめた。同じロープに縛られているハリーはよろめいた。
「ハーマイオニー」
「静かにして」ハリーが言った。「ロン、黙だまって。方法を考えなくては――」
「ハーマイオニー ハーマイオニー」
「計画が必要なんだ。叫ぶのはやめてくれ――このロープをほどかなくちゃ――」
「ハリー」暗闇から囁ささやく声がした。「ロン あんたたちなの」
ロンは叫ぶのをやめた。近くで何かが動く音がして、ハリーは、近づいてくる影を見た。
「ハリー ロン」
「ルーナ」
「そうよ、あたし ああ、あんただけは捕まってほしくなかったのに」
「ルーナ、ロープをほどくのを手伝ってくれる」ハリーが言った。
「あ、うん、できると思う……何か壊こわすときのために古い釘くぎが一本あるもン……ちょっと待って……」
頭上からまたハーマイオニーの叫さけび声が聞こえた。ベラトリックスの叫ぶ声も聞こえたが、何を言っているのかは聞き取れなかった。ロンがまた叫んだからだ。
「ハーマイオニー ハーマイオニー」
「オリバンダーさん」
ハリーは、ルーナがそう呼ぶ声を聞いた。
「オリバンダーさん、釘を持ってる ちょっと移動してくだされば……たしか水差しの横にあったと……」
ルーナはすぐに戻ってきた。
「じっとしてないとだめよ」ルーナが言った。
ハリーは、ルーナが結び目をほどこうとして、ロープの頑丈がんじょうな繊維せんいに穴を穿うがっているのを感じた。上の階から、ベラトリックスの声が聞こえてきた。
「もう一度聞くよ 剣つるぎをどこで手に入れた どこだ」
「見つけたの――見つけたのよ――やめて」
ハーマイオニーがまた悲鳴を上げた。ロンはますます激はげしく身をよじり、錆さびた釘が滑すべってハリーの手首に当たった。
「ロン、お願いだからじっとしてて」ルーナが小声で言った。「あたし、手元が見えないんだもン――」
「僕のポケット」ロンが言った。「僕のポケットの中。『灯ひ消けしライター』がある。灯あかりが一杯詰まってるよ」