数秒後、カチッと音がして、テントのランプから吸い取った光の玉がいくつも地ち下か牢ろうに飛び出した。もともとの出所に戻ることができない光は、小さな太陽のようにあちこちに浮かび、地下牢には光があふれた。ハリーはルーナを見た。白い顔に目ばかりが大きかった。杖作つえつくりのオリバンダーが、部屋の隅すみで身動きもせずに身を丸めているのが見えた。首を回して後ろを見ると、一緒いっしょに縛しばられている仲間が見えた。ディーンとグリップフックだ。小鬼こおには、ヒトと一緒に縛られているロープに支えられてやっと立ってはいたが、ほとんど意識がないように見えた。
「ああ、ずっとよくなったわ。ありがとう、ロン」
ルーナはそう言うと、また縄目なわめを叩たたき切りにかかった。
「あら、こんにちは、ディーン」
上からは、ベラトリックスの声が響ひびいている。
「おまえは嘘うそをついている、『穢けがれた血ち』め、私にはわかるんだ おまえたちはグリンゴッツの私の金庫に入ったんだろう 本当のことを言え、本当のことを」
またしても恐ろしい叫び声――。
「ハーマイオニー」
「ほかには何を盗んだ ほかに何を手に入れたんだ 本当のことを言え。さもないと、いいか、この小刀こがたなで切り刻きざんでやるよ」
「ほーら」
ハリーはロープが落ちるのを感じて、手首をさすりながら振り向いた。ロンが低い天井を見上げて、撥はね戸どはないかと探しながら、地ち下か牢ろうを走り回っているのが目に入った。ディーンは傷きずを負い、血だらけの顔でルーナに「ありがとう」と言い、震えながらその場に立っていた。しかしグリップフックは、ふらふらと右も左もわからないありさまで床に座り込んだ。色黒の顔に、幾筋いくすじもミミズ腫ばれが見えた。
ロンは、こんどは杖つえなしのまま「姿すがたくらまし」しようとしていた。
「出ることはできないんだもン、ロン」
ロンのむだなあがきを見ていたルーナが言った。
「地下牢は完全に逃亡とうぼう不可能になってるもン。あたしも最初はやってみたし、オリバンダーさんは長くいるから、もう、何もかも試してみたもン」
ハーマイオニーがまた悲鳴を上げ、その声は、肉体的な痛みとなってハリーの体を突き抜けた。自分の傷痕きずあとの激はげしい痛みはほとんど意識せずに、ハリーも地下牢を駆かけ回りはじめた。何を探しているのか自分でもわからないまま、ハリーは壁かべという壁を手探りしたが、心の奥では、むだなことだとわかっていた。