ビルとフラーが、階段の下に立っていた。
「グリップフックとオリバンダーに話がしたいんだけど」ハリーが言った。
「いけませーん」フラーが言った。「アハリー、もう少し待たないとだめでーす。ふーたりとも病気で、疲れーていて――」
「すみません」ハリーは冷静だった。「でも、待てない。いますぐ話す必要があるんです。秘密に――二人別々に。急を要することです」
「ハリー、いったい何が起こったんだ」ビルが聞いた。「君は、死んだしもべ妖精ようせいと半分気絶した小鬼ゴブリンを連れて現れたし、ハーマイオニーは拷問ごうもんを受けたみたいに見える。それに、ロンも、何も話せないと言い張るばかりだ――」
「僕たちが何をしているかは、話せません」ハリーはきっぱりと言った。「ビル、あなたは騎き士団しだんのメンバーだから、ダンブルドアが僕たちに、ある任務を残したことは知っているはずですね。でも、僕たち、その任務のことは、誰にも話さないことになっているんです」
フラーがいらだったような声を漏もらしたが、ビルはフラーのほうを見ずに、ハリーをじっと見ていた。深い傷痕きずあとに覆おおわれたビルの顔から、その表情を読むことは難しかった。しばらくして、ビルがようやく言った。
「わかった。どちらと先に話したい」
ハリーは迷った。自分の決定に何がかかっているかを、ハリーは知っていた。残された時間はほとんどない。いまこそ決心すべきときだ。分ぶん霊れい箱ばこか、秘宝ひほうか
「グリップフック」ハリーが言った。「グリップフックと先に話をします」
全速力で走ってきて、いましがた大きな障しょう害がい物ぶつを越えたかのように、ハリーの心臓は早鐘はやがねを打っていた。
「それじゃ、こっちだ」ビルが案内した。
階段を二、三段上がったところで、ハリーは立ち止まって振り返った。
「君たち二人にも来てほしいんだ」
居間の入口で、半分隠れてこそこそしていたロンとハーマイオニーに、ハリーが呼びかけた。
二人は奇妙きみょうにほっとしたような顔で、明るみに出てきた。
「具合はどう」ハリーがハーマイオニーに問いかけた。「君ってすごいよ――あの女がさんざん君を痛めつけていたときに、あんな話を思いつくなんて――」
ハーマイオニーは弱々しく微笑ほほえみ、ロンは片腕でハーマイオニーをぎゅっと抱き寄せた。
「ハリー、こんどは何をするんだ」ロンが聞いた。
「いまにわかるよ。さあ」
ハリー、ロン、ハーマイオニーは、ビルに従ついて急な階段を上がり、小さな踊おどり場ばに出た。そこは三つの扉とびらへと続いていた。