「グリップフック、僕、聞きたいことが――」
「あなたは、小鬼ゴブリンも救った」
「えっ」
「あなたは、私をここに連れてきた。私を救った」
「でも、別に困らないだろう」ハリーは少しいらいらしながら言った。
「ええ、別に、ハリー・ポッター」
そう言ったあと、グリップフックは指一本をからませて、細く黒い顎あごひげをひねった。
「でも、とても変な魔法使いです」
「そうかな」ハリーが言った。「ところでグリップフック、助けが必要なんだ。君にはそれができる」
小鬼こおには先を促うながすような様子も見せず、しかめ面つらのまま、こんなものを見るのは初めてだという目つきでハリーを見ていた。
「僕は、グリンゴッツの金庫破りをする必要があるんだ」
こんな荒っぽい言い方をするつもりではなかったのに、稲いな妻ずま形がたの傷痕きずあとに痛みが走って、またしてもホグワーツの輪郭りんかくが見えたとたん、言葉が口を突いて出てきてしまったのだ。ハリーはしっかりと心を閉じた。グリップフックのほうを、先に終えてしまわなければならない。ロンとハーマイオニーは、おかしくなったのではないかという表情でハリーを見つめた。
「ハリー――」
ハーマイオニーの言葉は、グリップフックによって遮さえぎられた。
「グリンゴッツの金庫破り」
小鬼はベッドで体の位置を変えながら、ビクッとして繰り返した。
「不可能です」
「そんなことはないよ」ロンが否定した。「前例がある」
「うん」ハリーが言った。「君に初めて会った日だよ、グリップフック。七年前の僕の誕生日」
「問題の金庫は、そのとき空からでした。最低限の防衛ぼうえいしかありませんでした」
小鬼はぴしゃりと言った。グリンゴッツを去ったとは言え、銀行の防御ぼうぎょが破られるという考えは腹に据すえかねるのだと、ハリーには理解できた。
「うん、僕たちが入りたい金庫は空じゃない。相当強力に守られていると思うよ」ハリーが言った。「レストレンジ家の金庫なんだ」
ハーマイオニーとロンが、度肝どぎもを抜かれて顔を見合わせるのが目に入った。しかし、グリップフックが答えてくれれば、そのあとで二人に説明する時間は十分あるだろう。
「可能性はありません」
グリップフックはにべもなく答えた。
「まったくありません。『おのれのものに あらざる宝、わが床下に 求める者よ――』」
「『盗人ぬすびとよ 気をつけよ――』うん、わかっている。覚えているよ」ハリーが言った。「でも、僕は、宝を自分のものにしようとしているんじゃない。自分の利益のために、何かを盗とろうとしているわけじゃないんだ。信じてくれるかな」
小鬼は、横目でハリーを見た。そのとき額ひたいの稲妻形の傷痕が疼うずいたが、ハリーは痛みを無視し、引き込もうとする誘いも拒絶きょぜつした。
「個人的な利益を求めない人だと、私が認める魔法使いがいるとすれば――」
グリップフックがようやく答えた。
「可能性はありません」
グリップフックはにべもなく答えた。
「まったくありません。『おのれのものに あらざる宝、わが床下に 求める者よ――』」
「『盗人ぬすびとよ 気をつけよ――』うん、わかっている。覚えているよ」ハリーが言った。「でも、僕は、宝を自分のものにしようとしているんじゃない。自分の利益のために、何かを盗とろうとしているわけじゃないんだ。信じてくれるかな」
小鬼は、横目でハリーを見た。そのとき額ひたいの稲妻形の傷痕が疼うずいたが、ハリーは痛みを無視し、引き込もうとする誘いも拒絶きょぜつした。
「個人的な利益を求めない人だと、私が認める魔法使いがいるとすれば――」
グリップフックがようやく答えた。