「それじゃ、僕はこの杖を使うべきかなぁ」
ロンが、ワームテールの杖をポケットから出して、オリバンダーに渡した。
「栗くりとドラゴンの琴線。二十三・五センチ。脆もろい。誘拐ゆうかいされてからまもなく、わしはピーター・ペティグリューのために無理やりこの杖を作らされた。そうじゃとも、君が勝ち取った杖じゃから、ほかの杖よりもよく君の命令を聞き、よい仕事をするじゃろう」
「そして、そのことは、すべての杖に通用するのですね」ハリーが聞いた。
「そうじゃろうと思う」
窪くぼんだ眼窩がんかから飛び出た目でハリーの顔をじっと見ながら、オリバンダーが答えた。
「ポッターさん、あなたは深遠しんえんなる質問をする。杖つえの術は、魔法の中でも複雑ふくざつで神秘的な分野なのじゃ」
「それでは、杖の真の所有者になるためには、前の持ち主を殺す必要はないのですね」
ハリーが聞いた。
オリバンダーはごくりと唾つばを飲んだ。
「必要 いいや、殺す必要がある、とは言いますまい」
「でも、伝説があります」
ハリーの動悸どうきはさらに高まり、傷痕きずあとの痛みはますます激はげしくなっていた。ヴォルデモートが考えを実行に移す決心をしたのだと、ハリーは確信した。
「一本の杖の伝説です――数本の杖かもしれません――殺人によって手から手へと渡されてきた杖です」
オリバンダーは青ざめた。雪のように白い枕の上で、オリバンダーの顔色は薄うすい灰色に変わり、巨大な目は、恐怖きょうふからか血走って飛び出していた。
「それは、ただ一本の杖じゃと思う」オリバンダーが囁ささやくように言った。
「そして、『例のあの人』は、その杖に興味があるのですね」ハリーが聞いた。
「わしは――どうして――」
オリバンダーの声がかすれ、ロンとハーマイオニーに助けを求めるように目を� The Wandmaker(14)