「だけど、ほんとに死んだのかな」
貝殻の家に着いてから三日目に、ロンが言った。ハリーはそのとき、庭と崖を仕切る壁の上から、遠くを眺めていたが、ロンとハーマイオニーがやって来て、話しはじめたのだ。ハリーは、一人にしておいてほしかった。二人の議論に加わる気にはなれなかった。
「そうよ、死んだのよ、ロン。お願いだから、蒸むし返さないで」
「事実を見ろよ、ハーマイオニー」ロンが、ハリーの向こう側にいるハーマイオニーに言った。ハリーは地平線を見つめたままだった。
「銀色の牝鹿めじか。剣つるぎ。ハリーが鏡の中に見た目――」
「ハリーは、目を見たと錯さっ覚かくしたのかもしれないって認めているわ ハリー、そうでしょう」
「そうかもしれない」ハリーはハーマイオニーを見ずに言った。
「だけど錯覚だとは思ってない。だろ」ロンが聞いた。
「ああ、思ってない」ハリーが言った。
「それ見ろ」ロンは、ハーマイオニーが割り込む前に急いで言葉を続けた。「もしあれがダンブルドアじゃなかったのなら、ドビーはどうやって、僕たちが地ち下か牢ろうにいるってわかったのか、ハーマイオニー、説明できるか」
「できないわ――でも、ダンブルドアがホグワーツの墓に眠っているなら、どうやってドビーを差し向けたのか、説明できるの」
「さあな。ダンブルドアのゴーストだったんじゃないか」
「ダンブルドアは、ゴーストになって戻ってきたりはしない」ハリーが言った。ダンブルドアについて、ハリーがいま確実に言えることなどほとんどなかったが、それだけはわかっていた。「ダンブルドアは逝いってしまうだろう」
「『逝ってしまう』って、どういう意味だ」ロンが聞いたが、ハリーが言葉を続ける前に、背後で声がした。
「アハリー」
フラーが長い銀色の髪かみを潮風になびかせて、家から出てきていた。
「アリー、グリップウフックが、あなたにあはなしたいって。いちばん小さい寝室にいまーすね。誰にも盗み聞きされたくない、と言っていまーす」
小鬼こおにに伝言役にされたことを、フラーが快く思っていないのは明らかだった。ぷりぷりしながら家に戻っていった。
グリップフックは、フラーが言ったように、三つある寝室のいちばん小さい部屋で、三人を待っていた。そこは、ハーマイオニーとルーナが寝ている部屋だった。グリップフックが赤いコットンのカーテンを閉めきっていたので、雲の浮かぶ明るい空の光が透すけて、部屋が燃えるように赤く輝かがやき、優雅ゆうがで軽やかな感じのこの家には似合わなかった。