「結論が出ました。ハリー・ポッター」
小鬼は脚あしを組んで低い椅い子すに腰掛こしかけ、細い指で椅子の肘掛ひじかけをトントンと叩たたいていた。
「グリンゴッツの小ゴブ鬼リンたちは、これを卑いやしい裏切りと考えるでしょうが、私はあなたを助けることにしました――」
「よかった」ハリーは、体中に安あん堵ど感かんが走るのを感じた。「グリップフック、ありがとう。僕たち本当に――」
「――見返りに」小鬼こおにははっきりと言った。「代償だいしょうをいただきます」
ハリーは少し驚いて、まごついた。
「どのくらいかな 僕はお金を持っているけど」
「お金ではありません」グリップフックが言った。「お金は持っています」
小鬼の黒い目がキラキラ輝いた。小鬼の目には白目がなかった。
「剣つるぎがほしいのです。ゴドリック・グリフィンドールの剣です」
昻たかまっていたハリーの気持が、がくんと落ち込んだ。
「それはできない」ハリーが言った。「すまないけど」
「それは」小鬼が静かに言った。「問題ですね」
「ほかの物をあげるよ」ロンが熱心に言った。「レストレンジたちはきっと、ごっそりいろんな物を持ってる。僕たちが金庫に入ったら、君は好きな物を取ればいい」
これは失言だった。グリップフックは怒りで真っ赤になった。
「私は泥どろ棒ぼうではないぞ 自分に権利のない宝を手に入れようとしているわけではない」
「剣は僕たちの――」
「違う」小鬼が言った。
「僕たちはグリフィンドール生だし、それはゴドリック・グリフィンドールの――」
「では、グリフィンドールの前は、誰のものでしたか」小鬼は姿勢を正して問いつめた。
「誰のものでもないさ」ロンが言った。「剣はグリフィンドールのために作られたものだろ」
「違う」小鬼はいらだって、長い指をロンに向けながら叫さけんだ。「またしても魔法使いの傲ごう慢まんさよ あの剣はラグヌック一世のものだったのを、ゴドリック・グリフィンドールが奪うばったのだ。これこそ失われた宝、小鬼ゴブリンの技の傑けっ作さくだ 小鬼ゴブリン族ぞくに帰属きぞくする品なのだ この剣は私を雇やとうことの対価たいかだ。いやならこの話はなかったことにする」
グリップフックは三人をにらみつけた。ハリーはほかの二人をちらりと見て、こう言った。
「グリップフック、僕たち三人で相談する必要があるんだけど、いいかな。少し時間をくれないか」
小鬼は、むっつりとうなずいた。