一階の誰もいない居間で、ハリーは眉根まゆねを寄せ、どうしたものかと考えながら暖炉だんろまで歩いた。その後ろでロンが言った。
「あいつ、腹の中で笑ってるんだぜ。あの剣をあいつにやることなんて、できないさ」
「ほんとなの」ハリーはハーマイオニーに聞いた。「あの剣は、グリフィンドールが盗んだものなの」
「わからないわ」ハーマイオニーがどうしようもないという調子で言った。「魔法史は、魔法使いたちが他の魔法生物に何かしたことについては、よく省はぶいてしまうの。でも、私が知るかぎり、グリフィンドールが剣つるぎを盗んだとは、どこにも書いてないわ」
「また、小鬼こおにお得意の話なんだよ」ロンが言った。「魔法使いはいつでも小鬼をうまく騙だまそうとしているってね。あいつが、僕たちの杖つえのどれかをほしいと言わなかっただけ、まだ運がよかったと考えるべきだろうな」
「ロン、小鬼が魔法使いを嫌うのには、ちゃんとした理由があるのよ」ハーマイオニーが言った。「過去において、残ざん忍にんな扱いを受けてきたの」
「だけど、小鬼だって、ふわふわのちっちゃなウサちゃん、というわけじゃないだろ」ロンが言った。「あいつら、魔法使いをずいぶん殺したんだぜ。あいつらだって汚い戦い方をしてきたんだ」
「でも、どっちの仲間のほうがより卑怯ひきょうで暴力的だったかなんて議論したところで、グリップフックが私たちに協力する気になってくれるわけでもないでしょう」
どうしたら問題が解決できるかを考えようと、三人ともしばらく黙だまり込んだ。ハリーは、窓からドビーの墓を見た。ルーナが、墓はか石いしの脇わきにジャムの瓶びんを置いてイソマツを活いけているところだった。
「オッケー」ロンが言った。ハリーは振り返って、ロンの顔を見た。「こういうのはどうだ グリップフックには、剣は金庫に入るまで僕たちが必要だと言う。そのあとであいつにやる、と言う。金庫の中に、贋にせ物ものがあるんだろう それと入れ替かえて、あいつに贋物をやる」
「ロン、グリップフックは、私たちよりも見分ける力を持っているのよ」ハーマイオニーが言った。「どこかで交こう換かんされていると気づいたのは、グリップフックだけだったのよ」
「うーん、だけど、やつが気づく前に、僕たちがずらかれば――」
ハーマイオニーにひとにらみされて、ロンは怯ひるんだ。
「そんなこと」ハーマイオニーが静かに言った。「卑劣だわ。助けを頼んでおいて、裏切るの ロン、小鬼は魔法使いがなぜ嫌いなのかって、それでもあなたは不思議に思うわけ」
ロンは耳を真っ赤にした。
「わかった、わかった 僕はそれしか思いつかなかったんだ それじゃ、君の解決策は何だ」
「小鬼に、何か代わりの物をあげる必要があるわ。何か同じくらい価値のある物を」
「すばらしい。手持ちの小鬼ゴブリン製せいの古い剣の中から、僕が一本持ってくるから、君がプレゼント用に包んでくれ」