グリップフックを含めた四人で、長い時間を過ごせば過ごすほど、ハリーは小鬼が好きになれない自分に気づいた。グリップフックは思ってもみなかったほど血に飢うえ、下等な生き物でも痛みを感じるという考え方を笑い、レストレンジ家の金庫にたどり着くまでに、ほかの魔法使いを傷きずつけるかもしれないという可能性を大いに喜んだ。ロンとハーマイオニーもやはり嫌けん悪お感かんを持っていることがハリーにはわかったが、三人ともその話はしなかった。グリップフックが必要だったからだ。
小鬼は、みんなと一いっ緒しょに食事をするのを、いやいや承知した。脚あしが治ってからもまだ、体が弱っているオリバンダーと同じように自分の部屋に食事を運ぶ待たい遇ぐうを要求し続けていたが、あるときビルが――フラーの怒りがついに爆発したあと――二階に行って、特別扱いは続けられないとグリップフックに言い渡したのだ。それからは、グリップフックは混み合ったテーブルに着いたが、同じ食べ物は拒こばみ、代わりに生肉の塊かたまり、根こん菜さい類、茸きのこ類を要求した。
ハリーは責任を感じた。聞きたいことがあるので小鬼こおにを「貝かい殻がらの家いえ」に残せと言い張ったのは、結局ハリーだった。ウィーズリー一家が全員隠れなければならなくなったのも、ビル、フレッド、ジョージ、ウィーズリー氏が全員仕事に行けなくなったのも、ハリーのせいだ。
「ごめんね」ある風の強い四月の夕暮れ、夕食の支度を手伝いながら、ハリーがフラーに謝あやまった。「僕、君に、こんな大変な思いをさせるつもりはなかったんだけど」
フラーは、グリップフックとビルのステーキを切るために、包丁に準備じゅんびさせているところだった。グレイバックに襲おそわれて以来、ビルは生肉を好むようになっていた。包丁が傍かたわらで肉を削そぎ切りしている間、少しいらいらしていたフラーの表情が和やわらいだ。
「アハリー、あなたはわたしの妹の命を救いまーした。忘れませーん」
厳げん密みつに言えば、それは事実ではなかった。しかし、ハリーは、ガブリエールの命が本当に危なかったわけではないということを、フラーには言わないでおこうと思った。
「いーずれにしても」
フラーは竈かまどの上のソース鍋なべに杖つえを向けた。鍋はたちまちグツグツ煮にえ出した。
「オリバンダーさんは今夜、ミュリエールのところへ行きまーす。そうしたら、少し楽になりまーすね。あの小鬼ゴブリンは」フラーはそう口にするだけで、ちょっと顔をしかめた。「一階に移動できまーす。そして、あなたと、ロンとディーンが小鬼の寝室に移ることができまーす」
「僕たちは居間で寝てもかまわないんだ」ハリーが言った。
小鬼はソファで寝るのがお気に召めさないだろうとハリーにはわかっていたし、グリップフックを上機じょうき嫌げんにさせておくことが、計画にとっては大事だった。
「僕たちのことは気にしないで」フラーがなおも言い返そうとしたので、ハリーが言葉を続けた。「僕たちも、もうすぐ、君に面倒をかけなくてすむようになるよ。僕もロンも、ハーマイオニーも。もうあまり長くここにいる必要がないんだ」
「それは、どういう意味でーすか」
宙に浮かべたキャセロール皿に杖を向けたまま、フラーは眉根まゆねを寄せてハリーを見た。
「あなたはもーちろん、ここから出てはいけませーん。あなたはここなら安全でーす」