ルーピンは敷居しきいに倒れ込んだ。真っ青な顔で旅行マントに身を包み、風にあおられた白はく髪はつは乱れている。ルーピンは立ち上がって部屋を見回し、誰がいるかを確かめた後のち大声で叫んだ。
「男の子だ ドーラの父親の名前を取って、テッドと名付けたんだ」
ハーマイオニーが金切かなきり声ごえを上げた。
「えっ――トンクスが――トンクスが赤ちゃんを」
「そうだ。そうなんだ。赤ん坊が生まれたんだ」ルーピンが叫んだ。
テーブル中が喜びに沸わき、安堵あんどの吐息といきを漏もらした。ハーマイオニーとフラーは「おめでとう」と甲かん高だかい声を上げた。ロンは、そんなものはいままで聞いたことがないという調子で「ヒエーッ、赤ん坊かよ」と言った。
「そうだ――そうなんだ――男の子だ」
ルーピンは、幸せでぼーっとしているように見えた。ルーピンはテーブルをぐるっと回って、ハリーをしっかり抱きしめた。グリモールド・プレイスの厨房ちゅうぼうでの出来事が、嘘うそのようだった。
「君が名な付づけ親おやになってくれるか」ハリーを離して、ルーピンが聞いた。
「ぼ――僕が」ハリーは舌がもつれた。
「そう、君だ、もちろんだ――ドーラも大賛成なんだ。君ほどぴったりの人はいない――」
「僕――ええ――うわぁ――」ハリーは感かん激げきし、驚き、うれしかった。
ビルはワインを取りに走り、フラーはルーピンに、一いっ緒しょに飲みましょうと勧すすめていた。
「あまり長くはいられない。戻らなければならないんだ」
ルーピンは、全員ににっこり笑いかけた。ハリーがこれまでに見たルーピンより、何歳も若く見えた。
「ありがとう、ありがとう、ビル」
ビルは間もなく、全員のゴブレットを満たした。みんなが立ち上がり、杯さかずきを高く掲かかげた。
「テディ・リーマス・ルーピンに」ルーピンが音頭おんどを取った。「未来の偉大な魔法使いに」
「赤ちゃんは、どちらーに似ていまーすか」フラーが聞いた。
「私はドーラに似ていると思うんだが、ドーラは私に似ていると言うんだ。髪かみの毛が少ない。生まれたときは黒かったのに、一時間くらいで間違いなく赤くなった。私が戻るころには、ブロンドになっているかもしれない。アンドロメダは、トンクスの髪も、生まれた日に色が変わりはじめたと言うんだ」
ルーピンはゴブレットを飲み干し、ビルがもう一杯注つごうとすると、にこにこしながら「ああ、それじゃ、いただくよ。もう一杯だけ」と受けた。