「ハリー、誰か来る音が聞こえるわ」
ハーマイオニーは、ベラトリックスの杖を滝に向けて叫さけんだ。
「プロテゴ 護まもれ」
「盾たての呪じゅ文もん」がトンネルを飛んでいき、魔法の滝の流れを止めるのが見えた。
「いい思いつきだ」ハリーが言った。「グリップフック、道案内してくれ」
「どうやってここから出るんだ」
グリップフックのあとを暗くら闇やみに向かって急いで歩きながら、ロンが聞いた。ボグロッドは年老いた犬のように、ハァハァ言いながらそのあとに従ついてきた。
「いざとなったら考えよう」ハリーが言った。
ハリーは耳を澄すましていた。近くで何かがガランガランと音を立てて動き回っている気配を感じたのだ。
「グリップフック、あとどのくらい」
「もうすぐです。ハリー・ポッター、もうすぐ……」
角を曲がったとたん、ハリーの警けい戒かいしていたものが目に入った。予想していたとは言え、やはり全員が棒立ぼうだちになった。
巨大なドラゴンが、行く手の地面につながれ、最も奥深くにある四つか五つの金庫に誰も近づけないように立ちはだかっていた。長い間地下に閉じ込められていたせいで、色の薄うすれた鱗うろこは剥はげ落ちやすくなり、両眼りょうがんは白はく濁だくしたピンク色だ。両の後あと脚あしには足あし枷かせがはめられ、岩がん盤ばん深く打ち込まれた巨大な杭くいに、鎖くさりでつながれていた。棘とげのある大きな翼つばさは、閉じられて胴体に折りたたまれていたが、広げればその洞ほらをふさいでしまうだろう。ドラゴンは醜みにくい頭をハリーたちに向けて吼ほえ、その声は岩を震わせた。口を開くと炎が噴ふき出し、ハリーたちは走って退却たいきゃくした。
「ほとんど目が見えません」グリップフックが言った。「しかし、そのためにますます獰どう猛もうになっています。ただ、我々にはこれを抑える方法があります��リンゴッツ Gringotts(12)