「外には絶対出られないわ。ドラゴンが大きすぎるもの」
ハーマイオニーが悲鳴を上げた。しかしドラゴンは、開けた口から再び炎を吐いて、トンネルを吹き飛ばした。床も天井も割れて砕くだけた。ドラゴンは、力まかせに鉤かぎ爪づめで引っかき、道を作るのに奮ふん闘とうしていた。熱と埃ほこりの中で、ハリーは両目を固く閉じていた。岩が砕ける音とドラゴンの咆ほう哮こうは耳を聾ろうするばかりで、ハリーは背中につかまっているのがやっとだった。いまにも振り落とされるのではないかと思ったそのとき、ハーマイオニーの叫ぶ声が聞こえた。
「デイフォディオ 掘ほれ」
ハーマイオニーは、ドラゴンがトンネルを広げるのを手伝っていた。新しん鮮せんな空気を求め、小鬼の甲かん高だかい声と鳴子なるこの音から遠ざかろうと格かく闘とうしているドラゴンのために、天井を穿うがっていたのだ。ハリーとロンもハーマイオニーに倣ならい、穴掘り呪文を連発して、天井を吹き飛ばした。地下の湖を通り過ぎたあたりで、鼻息も荒く這はい進むこの巨大な生き物は、行く手に自由と広い空間を感じ取った様子だった。背後のトンネルは、ドラゴンが叩たたきつける棘とげのある尻尾しっぽと叩き壊こわされた瓦礫がれきで埋まり、大きな岩の塊かたまりや巨大な鍾しょう乳にゅう石せきの残ざん骸がいが累るい々るいと転がっていた。後方の小鬼こおにの鳴らすガチャガチャという音はだんだんくぐもり、前方にはドラゴンの吐はく炎で、着々と道が開けていた――。
呪文じゅもんの力とドラゴンの怪力が重なり、三人はついに地下トンネルを吹き飛ばして抜け出し、大だい理り石せきのホールに突入した。小鬼も魔法使いも悲鳴を上げ、身を隠す場所を求めて逃げ惑まどった。とうとう翼つばさを広げられる空間を得たドラゴンは、入口の向こうに爽さわやかな空気を嗅かぎ分け、角つのの生えた頭をその方向に向けて飛び立った。ハリー、ロン、ハーマイオニーを背中にしがみつかせたまま、ドラゴンは金属の扉とびらを力ずくで突き破った。ねじれて蝶ちょう番つがいからだらりとぶら下がった扉を尻目しりめに、よろめきながらダイアゴン横丁よこちょうに進み出たドラゴンは、そこから高々と大空に舞い上がった。