「銀色の牝鹿めじか」ロンが興奮して叫さけんだ。「あれもあなただったのですか」
「いったい何のことだ」アバーフォースが言った。
「誰かが、牝鹿の守しゅ護ご霊れいを僕たちに送ってくれた」
「それだけの脳みそがあれば、フン、死し喰くい人びとになれるかもしれんな。たったいま、俺おれの守護霊は山や羊ぎだと証明してみせただろうが」
「あっ」ロンが言った。「そうか……あのさ、僕、腹ペコだ」
ロンは、胃袋いぶくろがグーッと大きな音を立てたのを弁解するように、つけ加えた。
「食い物はある」アバーフォースはすっと部屋を抜け出し、ほどなく大きなパンの塊かたまりとチーズ、蜂はち蜜みつ酒しゅの入った錫すず製せいの水差しを手に戻ってきて、暖炉だんろ前の小さなテーブルに食べ物を置いた。三人は貪むさぼるように飲み、かつ食べた。しばらくは、暖炉の火が爆はぜる音とゴブレットの触ふれ合う音や物を噛かむ音以外は、何の音もしなかった。
「さて、それじゃぁ――」
三人がたらふく食い、ハリーとロンが眠たそうに椅い子すに座り込むと、アバーフォースが言った。
「君たちをここから出す手立てを考えないといかんな。夜はだめだ。暗くなってから外に出たらどうなるか、聞いていただろう。『夜よ鳴なき呪じゅ文もん』が発動して、連中はドクシーの卵たまごに飛びかかるボウトラックルのように襲おそってくるだろう。牡鹿おじかを山羊と言いくるめるのも、二度目はうまくいくとは思えん。明け方まで待て。夜間外出禁止令が解とけるから、そのときにまた『マント』を被かぶって、歩いて出発しろ。まっすぐホグズミードを出て、山に行け。そこからなら『姿すがたくらまし』できるだろう。ハグリッドに会うかもしれん。あいつらに捕まりそうになって以来、グロウプと一いっ緒しょにあそこの洞ほら穴あなに隠れている」