ハリーは黙だまっていた。ここ何か月もの間自分を迷わせてきたダンブルドアに対する疑いや確信のなさを、口にしたくはなかった。ドビーの墓はか穴あなを掘りながら、ハリーは選び取ったのだ。アルバス・ダンブルドアがハリーに示した曲がりくねった危険な道をたどり続けると決心し、自分の知りたかったことのすべてを話してもらってはいないということも受け入れ、ただひたすら信じることに決めたのだ。再び疑いたくはなかった。目的から自分を逸そらそうとするものには、いっさい耳を傾けたくなかった。ハリーは、アバーフォースの目を見つめ返した。驚くほどその兄の眼差まなざしに似ていた。明るいブルーの目は、やはり、相手を線で透視とうししているような印象を与えた。ハリーは、アバーフォースが自分の考えを見透し、そういう考え方をするハリーを軽けい蔑べつしていると思った。
「ダンブルドア先生は、ハリーのことをとても気にかけていました」
ハーマイオニーがそっと言った。
「へえ、そうかね」アバーフォースが言った。「おかしなことに、兄がとても気にかけた相手の多くは、結局、むしろ放ほうっておかれたほうがよかったと思われる状態になった」
「どういうことでしょう」ハーマイオニーが小さな声で聞いた。
「気にするな」アバーフォースが言った。
「でも、いまおっしゃったことは、とても深しん刻こくなことだわ」ハーマイオニーが言った。「それ――それは、妹さんのことですか」
アバーフォースは、ハーマイオニーをにらみつけた。出かかった言葉を噛かみ殺しているかのように唇くちびるが動いた。そして、堰せきを切ったように話し出した。
「妹は六つのときに、三人のマグルの男の子に襲おそわれ、乱暴された。妹が魔法を使っているところを、やつらは裏うら庭にわの垣根かきねからこっそり覗のぞいていたんだ。妹はまだ子どもで、魔法力を制せい御ぎょできなかった。その歳では、どんな魔法使いだってできはせん。たぶん、見ていた連中は怖こわくなったのだろう。植え込みを押し分けて入ってきた。もう一度やれと言われても、妹は魔法を見せることができなかった。それでやつらは、風変わりなチビに変なまねをやめさせようと図に乗った」
暖炉だんろの明かりの中で、ハーマイオニーの目は大きく見開かれていた。ロンは少し気分が悪そうな顔だった。アバーフォースが立ち上がった。兄のアルバス同様背の高いアバーフォースは、怒りと激はげしい心の痛みで、突然、恐ろしい形相ぎょうそうになった。