「口こう論ろんになった……そして俺は杖つえを抜き、やつも抜いた。兄の親友ともあろう者が、俺に『磔はりつけの呪じゅ文もん』をかけたのだ――アルバスはあいつを止めようとした。それからは三みつ巴どもえの争いになり、閃せん光こうが飛び、バンバン音がして、妹は発作ほっさを起こした。アリアナには耐たえられなかったのだ――」
アバーフォースの顔から、まるで瀕死ひんしの重傷を負ったように血の気が失うせていった。
「――だから、アリアナは助けようとしたのだと思う。しかし自分が何をしているのか、アリアナにはよくわかっていなかったのだ。そして、誰がやったのかはわからないが――三人ともその可能性はあった――妹は死んだ」
最後の言葉は泣き声になり、アバーフォースは傍かたわらの椅い子すにがっくりと座り込んだ。ハーマイオニーの顔は涙に濡ぬれ、ロンは、アバーフォースと同じくらい真っ青になっていた。ハリーは、激はげしい嫌けん悪お感かん以外、何も感じられなかった。聞かなければよかったと思った。聞いたことを、きれいさっぱり洗い流してしまいたいと思った。
「本当に……本当にお気の毒」ハーマイオニーが囁ささやいた。
「逝いってしまった」アバーフォースがかすれ声で言った。「永久に、逝ってしまった」
アバーフォースは袖そで口ぐちで洟はなを拭ぬぐい、咳せき払ばらいした。
「もちろん、グリンデルバルドのやつは、急いでずらかった。自国で前科のあるやつだから、アリアナのことまで自分の咎とがにされたくなかったんだ。そしてアルバスは自由になった。そうだろうが 妹という重荷から解かい放ほうされ、自由に、最も偉大な魔法使いになる道を――」
「先生は決して自由ではなかった」ハリーが言った。
「何だって」アバーフォースが言った。
「決して」ハリーが言った。「あなたのお兄さんは、亡くなったあの晩、魔法の毒薬を飲み、幻げん覚かくを見ました。叫さけび出し、その場にいない誰かに向かって懇こん願がんしました。『あの者たちを傷きずつけないでくれ、頼む……代わりにわしを傷つけてくれ』」