ロンとハーマイオニーは、目を見張ってハリーを見た。湖に浮かぶ島で何が起こったのかを、ハリーは一度も詳くわしく話していなかった。ハリーとダンブルドアがホグワーツに戻ってからの一連の出来事の大きさが、その直前の出来事を完全に覆おおい隠してしまっていた。
「ダンブルドアは、あなたとグリンデルバルドのいる、昔の場面に戻ったと思ったんだ。きっとそうだ」ハリーはダンブルドアのうめきと、すがるような言葉を思い出しながら言った。「先生は、グリンデルバルドが、あなたとアリアナとを傷つけている幻覚を見ていたんだ……それが先生にとっては拷ごう問もんだった。あのときのダンブルドアをあなたが見ていたら、自由になったなんて言わないはずだ」
アバーフォースは、節ふしくれだって血管の浮き出た両手を見つめ、想いに耽ふけっているようだった。しばらくして、アバーフォースが言った。
「ポッター、確信があるのか 俺の兄が、君自身のことより、より大きな善ぜんのほうに関心があったとは思わんのか 俺の小さな妹と同じように、君が使い捨てにされているとは思わんのか」
冷たい氷が、ハリーの心臓を貫いたような気がした。
「そんなこと信じないわ。ダンブルドアはハリーを愛していたわ」ハーマイオニーが言った。
「それなら、どうして身を隠せと言わんのだ」アバーフォースが切り返した。「ポッターに、自分を大事にしろ、こうすれば生き残れると、なぜ言わんのだ」
「なぜなら」ハーマイオニーより先に、ハリーが答えていた。「ときには、自分自身の安全よりも、それ以上のことを考える必要がある ときには、より大きな善のことを考えなければならない これは戦いなんだ」
「君はまだ十七歳なんだぞ」
「僕は成人だ。あなたがあきらめたって、僕は戦い続ける」
「誰があきらめたと言った」
「『不ふ死し鳥ちょうの騎き士し団だんはもうおしまいだ』」ハリーが繰り返した。「『例のあの人の勝ちだ。もう終わった。そうじゃないと言うやつは、自分を騙だましている』」
「それでいいと言ったわけじゃない。しかし、それが本当のことだ」
「違う」ハリーが言った。「あなたのお兄さんは、どうすれば『例のあの人』の息の根を止められるかを知っていた。そして、その知識を僕に引き渡してくれた。僕は続ける。やり遂とげるまで――でなければ、僕が倒れるまでだ。どんな結末になるかを、僕が知らないなんて思わないでください。僕にはもう、何年も前からわかっていたことなんです」