ハリーはアバーフォースが嘲あざけるか、それとも反論するだろうと待ち構えたが、どちらでもなかった。アバーフォースはただ、顔をしかめただけだった。
「僕たちは、ホグワーツに入らなければならないんです」ハリーがまた言った。「もし、あなたに助けていただけないのなら、僕たちは夜明けまで待って、あなたにはご迷惑めいわくをかけずに自分たちで方法を見つけます。もし助けていただけるなら――そうですね、いますぐそう言っていただけるといいのですが」
アバーフォースは椅い子すに座ったまま動かず、驚くほど兄と瓜うり二ふたつの目で、ハリーをじっと見つめていた。やがて咳せき払ばらいをしてアバーフォースはついと立ち上がり、小さなテーブルを離れてアリアナの肖しょう像ぞう画がのほうに歩いていった。
「おまえは、どうすればよいかわかっているね」アバーフォースが言った。
アリアナは微笑ほほえんで、後ろを向いて歩きはじめた。肖像画に描かれた人たちが普通するように額がく縁ぶちの縁から出ていくのではなく、背後に描かれた長いトンネルに入っていくような感じだった。か細い姿がだんだん遠くなりついに暗くら闇やみに飲み込まれてしまうまで、ハリーたちはアリアナを見つめていた。
「あのう――これは――」ロンが何か言いかけた。
「入口はいまや唯ただ一ひとつ」アバーフォースが言った。「やつらは、昔からの秘密の通路を全部押さえていて、その両端りょうたんをふさいだ。学校と外とを仕切る壁かべの周りは吸きゅう魂こん鬼きが取り巻き、俺の情じょう報ほう網もうによれば、校内は定期的に見張りが巡回じゅんかいしている。あの学校が、これほど厳重げんじゅうに警備けいびされたことは、いまだかつてない。中に入れたとしても、スネイプが指し揮きを執とり、カロー兄妹きょうだいが副ふく指し揮き官かんだ。そんなところで、君たちに何ができるのやら……まあ、それはそっちが心配することだな 君は死ぬ覚悟があると言った」
「でも、どういうこと……」
アリアナの絵を見て顔をしかめながら、ハーマイオニーが言った。
絵に描かれたトンネルの向こう側に、再び白い点が現れ、アリアナがこんどはこちらに向かって歩いてきた。近づくにつれて、だんだん姿が大きくなってくる。さっきと違って、アリアナよりも背の高い誰かが一いっ緒しょだ。足を引きずりながら、興奮した足取りでやってくる。その男の髪かみはハリーの記憶よりもずっと長く伸び、顔には数箇所切り傷きずが見える。服は引き裂さかれて破れていた。二人の姿はだんだん大きくなり、ついに顔と肩で画面が埋まるほどになった。そして、画面全体が壁かべの小さな扉とびらのようにパッと前に開き、本物のトンネルの入口が現れた。その中から、伸び放ほう題だいの髪に傷を負った顔、引き裂かれた服の、本物のネビル・ロングボトムが這はい出してきた。ネビルは大きな歓かん声せいを上げながら、マントルピースから飛び降おりて叫さけんだ。
「君が来ると信じていた 僕は信じていた ハリー」