「何だって」ハリー、ロン、ハーマイオニーが同時に声を上げた。
「うん」
坂が急きゅう勾こう配ばいになって少し息を切らしながら、ネビルが言った。
「まあね、やつらの考え方はわかるよ。親たちをおとなしくさせるために子どもを誘ゆう拐かいするっていうのは、うまくいった。それなら、その逆を始めるのは時間の問題だったと思うよ。ところが――」
ネビルが三人を振り返った。その顔がにやっと笑っているのを見て、ハリーは驚いた。
「あいつら、ばあちゃんを侮あなどった。独ひとり暮らしの老魔女だ、とくに強力なのを送り込む必要はないって、たぶんそう思ったんだろう。とにかく――」
ネビルは声を上げて笑った。
「ドーリッシュはまだ聖せいマンゴに入院中で、ばあちゃんは逃亡とうぼう中だ。ばあちゃんから手紙が来たよ」
ネビルはローブの胸ポケットをポンと叩たたいた。
「僕のことを誇ほこりに思うって。それでこそ親に恥じない息子だ、がんばれって」
「かっこいい」ロンが言った。
「うん」ネビルがうれしそうに言った。
「ただね、僕を抑える手段がないと気づいたあとは、あいつら、ホグワーツには結局、僕なんか要いらないと決めたみたいだ。僕を殺そうとしているのかアズカバン送りにするつもりなのかは知らないけど、どっちにしろ、僕は姿を消すときが来たって気づいたんだ」
「だけど――」
ロンがさっぱりわからないという顔で言った。
「僕たち――僕たち、まっすぐホグワーツに向かっているんじゃないのか」
「もちろんさ」ネビルが言った。「すぐわかるよ。ほら着いた」
角を曲がると、トンネルはそのすぐ向こうで終わっていた。短い階段があって、その先に、アリアナの肖しょう像ぞう画がの背後に隠されていたと同じような扉とびらがあった。ネビルは扉を押し開けてよじ登り、くぐり抜けた。ハリーもあとに続いた。ネビルが、見えない人々に向かって呼びかける声が聞こえた。
「この人だーれだ 僕の言ったとおりだろ」
ハリーが通路の向こう側の部屋に姿を現すと、数人が悲鳴や歓かん声せいを上げた。
「ハリー」
「ポッターだ。ポッターだよ」
「ロン」
「ハーマイオニー」
色いろ鮮あざやかな壁かべ飾かざりやランプや大勢の顔が見え、ハリーは頭が混乱した。次の瞬間しゅんかん、ハリー、ロン、ハーマイオニーの三人は、二十人以上の仲間に取り囲まれ、抱きしめられて背中を叩たたかれ、髪かみの毛をくしゃくしゃにされ、握手あくしゅ攻めにあった。たったいま、クィディッチの決勝戦で優勝したかのようだった。
「オッケー、オッケー、落ち着いてくれ」
ネビルが呼びかけ、みんなが一歩退ひいたので、ハリーはようやく周りの様子を眺ながめることができた。