まったく見覚えのない部屋だった。飛びきり贅ぜい沢たくな樹上じゅじょうの家の中か、巨大な船室のような感じの大きな部屋だった。色とりどりのハンモックが、天井から、そして窓のない黒っぽい板いた壁かべに沿って張り出したバルコニーからぶら下がっている。板壁は、鮮やかなタペストリーの掛かけ物で覆おおわれていた。タペストリーは、深紅しんくの地じにグリフィンドールの金色のライオンの縫ぬい取り、黄色地にハッフルパフの黒い穴あな熊ぐま、そして青地あおじにレイブンクローのブロンズ色の鷲わしだ。銀と緑のスリザリンだけがない。本でふくれ上がった本ほん棚だな、壁に立てかけた箒ほうきが数本、そして隅すみには大きな木のケースに入ったラジオがある。
「ここはどこ」
「『必ひつ要ようの部へ屋や』に決まってるよ」ネビルが言った。「いままでで最高だろう カロー兄きょう妹だいが僕を追いかけていた。それで、隠れ場所はここしかないと思ったんだ。何とか入り込んだら、中はこんなになってたんだ 最初に僕が入ったときは、全然こんなじゃなくて、ずっと小さかった。ハンモックが一つとグリフィンドールのタペストリーだけだったんだ。でも、ダンブルドア軍団のメンバーがどんどん増えるに連れて、部屋が広がったんだよ」
「それで、カロー兄妹きょうだいは入れないのか」
ハリーは扉とびらを探して、ぐるりと見回しながら聞いた。
「ああ」シェーマス・フィネガンが答えた。
ハリーは、その声を聞くまでシェーマスだとわからなかった。それほど傷きずだらけで、腫はれ上がった顔だった。
「ここはきちんとした隠れ家だ。僕たちの誰かが中にいるかぎり、やつらは手を出せない。扉が開かないんだ。全部ネビルのおかげさ。ネビルは本当にこの部屋を理解してる。この部屋に、必要なことを正確に頼まないといけないんだ――たとえば、『カローの味方は、誰もここに入れないようにしたい』――そしたら、この部屋はそのようにしてくれる ただ、抜け穴を必ず閉めておけばいいのさ ネビルはすごいやつだ」
「たいしたことじゃないんだ。ほんと」
ネビルは謙けん遜そんした。
「ここに一日半ぐらい隠れていたら、すごくお腹が空いて、それで、何か食べるものがほしいって願った。ホッグズ・ヘッドへの通路が開いたのは、そのときだよ。そのトンネルを通っていったら、アバーフォースに会った。アバーフォースが僕たちに、食料を提供してくれているんだ。なぜかこの『必要の部屋』は、それだけはしてくれない」
「うん、まあ、食料は『ガンプの元げん素そ変へん容ようの法ほう則そく』の五つの例外の一つだからな」
ロンの言葉に、みんな呆気あっけに取られた。