「それで、僕たち、もう二週間近く、ここに隠れているんだ」シェーマスが言った。「ハンモックが必要になるたびに、この部屋は追加してくれるし、女子が入ってくるようになったら、急にとてもいい風呂場が――」
「――私たちがちゃんと体を洗いたいと思ったら、現れたの。ええそうよ」
ラベンダー・ブラウンが説明を加えた。ハリーはそのときまで、ラベンダーがいることに気づかなかった。あらためてきちんと部屋を見回すと、ハリーの見知った顔がたくさんいるのに気がついた。双子ふたごのパチル姉妹もいるし、そのほかにも、テリー・ブート、アーニー・マクミラン、アンソニー・ゴールドスタイン、マイケル・コーナー。
「ところで、君たちが何をしていたのか、教えてくれよ」アーニーが言った。
「噂うわさがあんまり多すぎてね、僕たち、『ポッターウオッチ』で、何とか君の動きに追いつくようにしてきたんだ」
アーニーは、ラジオを指差した。
「君たちまさか、グリンゴッツ破りなんか、していないだろう」
「したよ」ネビルが言った。「それに、ドラゴンのこともほんとさ」
バラバラと拍はく手しゅが起こり、何人かが「ウワッ」と声を上げた。ロンは舞ぶ台たい俳はい優ゆうのようにお辞じ儀ぎした。
「何が目的だったの」シェーマスが熱くなって聞いた。
三人は自分たちから質問することで、みんなの質問をかわそうとした。しかしその前に、稲いな妻ずま形がたの傷きず痕あとに焼けるような激げき痛つうが走った。ハリーは、嬉き々きとした顔で知りたがっているみんなに急いで背を向けた。
「必ひつ要ようの部へ屋や」は消え去り、ハリーは荒れ果てた石いし造づくりの小屋の中に立っていた。足下の腐くさった床板が剥はぎ取られ、穴があいたその脇わきに、掘り出された黄金の箱が空からっぽになって転がっていた。ヴォルデモートの怒りの叫さけびが、ハリーの頭の中でガンガン響ひびいた。
ハリーは、全力を振りしぼってヴォルデモートの心から抜け出し、ふらふらしながら自分のいる「必要の部屋」に戻ってきた。顔からは汗が噴ふき出し、ロンに支えられて立っていた。
「ハリー、大丈夫」ネビルが声をかけていた。「腰掛こしかけたら たぶん疲れているせいじゃ――」
「違うんだ」
ハリーはロンとハーマイオニーを見て、ヴォルデモートが分ぶん霊れい箱ばこの一つがなくなっているのに気づいたと、無言で伝えようとした。時間がどんどんなくなっていく。ヴォルデモートが次にホグワーツに来るという選せん択たくをしたなら、三人は機会を失ってしまう。