「僕たちは、先に進まなくちゃならない」
ハリーが言った。二人の表情から、ハリーは理解してくれたと思った。
「それじゃ、ハリー、僕たちは何をすればいい」シェーマスが聞いた。「計画は」
「計画」ハリーが繰り返した。
ヴォルデモートの激はげしい怒りに再び引っ張り込まれないようにと、ハリーはありったけの意思の力を使っていたし、傷痕は焼けるように痛み続けていた。
「そうだな、僕たちは――ロンとハーマイオニーと僕だけど――やらなくちゃいけないことがあるんだ。そのあとは、ここから出ていく」
こんどは、笑うものも「ウワッ」と言うものもいなかった。ネビルが困こん惑わくした顔で言った。
「どういうこと 『ここから出ていく』って」
「ここに留まるために、戻ってきたわけじゃない」
ハリーは痛みを和やわらげようと傷痕を擦こすりながら言った。
「僕たちは大切なことをやらなければならないんだ――」
「何なの」
「僕――僕、話せない」
ブツブツというつぶやきがさざなみのように広がった。ネビルは眉根まゆねを寄せた。
「どうして僕たちに話せないの 『例のあの人』との戦いに関係したことだろう」
「それは、うん――」
「なら、僕たちが手伝う」
ダンブルドア軍団のほかのメンバーも、ある者は熱心に、ある者は厳粛げんしゅくにうなずいた。中の二人が椅い子すから立ち上がり、すぐにでも行動する意思を示した。
「君たちにはわからないことなんだ」
ハリーは、ここ数時間の間に、この言葉を何度も言ったような気がした。
「僕たち――君たちには話せない。どうしても、やらなければならないんだ――僕たちだけで」
「どうして」ネビルが尋たずねた。
「どうしてって……」
最後の分ぶん霊れい箱ばこを探さなければと焦あせり、少なくともどこから探しはじめたらいいかを、ロンとハーマイオニーの二人だけと話したいと焦るあまり、ハリーはなかなか考えがまとまらなかった。額ひたいの傷きず痕あとは、まだジリジリと焼けるように痛んでいた。
「ダンブルドアは、僕たち三人に仕事を遺のこした」ハリーは慎重しんちょうに答えた。「そして、そのことを話すわけには――つまり、ダンブルドアは、僕たちに、三人だけにその仕事をしてほしいと考えていたんだ」