またしても背後で物音がして、ハリーは振り返った。とたんに心臓が止まったような気がした。壁かべの穴をよじ登ってきたのはジニーだった。すぐ後ろにフレッド、ジョージ、リー・ジョーダンが続いていた。ジニーは、ハリーに輝くような笑顔を向けた。ハリーは、ジニーがこんなに美しいことを忘れていた。いや、これまで十分に気がついていなかった。しかし、ジニーを見て、これほどうれしくなかったこともない。
「アバーフォースのやつ、ちょっといらついてたな」
フレッドは、何人かの歓迎の声に応こたえるように手を挙げながら言った。
「ひと眠りしたいのに、あの酒場が駅になっちまってさ」
ハリーは口をあんぐり開けた。リー・ジョーダンの後ろからハリーの昔のガールフレンドのチョウ・チャンが現れ、ハリーに微笑ほほえみかけていた。
「伝言を受け取ったわ」
チョウは偽ガリオン金貨を持った手を挙げ、マイケル・コーナーのほうに歩いていって、横に座った。
「さあ、どういう計画だ、ハリー」ジョージが言った。
「そんなものはない」
ハリーは、急にこれだけの人間が現れたことに戸惑とまどい、しかも傷きず痕あとの激はげしい痛みのせいで、状況が十分に消化しきれていなかった。
「実行しながら、計画をでっち上げるわけだな 俺おれの好みだ」フレッドが言った。
「こんなこと、やめてくれ」ハリーがネビルに言った。「何のために、みんなを呼び戻したんだ 正気の沙さ汰たじゃない――」
「僕たち、戦うんだろう」
ディーンが、自分の偽にせガリオン金貨を取り出しながら言った。
「伝言は、こうだ。ハリーが戻った。僕たちは戦う だけど、僕は杖つえが要いるな――」
「持ってないのか、杖を――」シェーマスが何か言いかけた。
ロンが、突然ハリーに向かって言った。
「みんなに手伝ってもらったら」
「えっ」
「手伝ってもらえるよ」
ロンは、ハリーとロンの間に立っているハーマイオニーにしか聞こえないように、声を落として言った。
「あれがどこにあるか、僕たちにはわかってない。早いとこ見つけないといけないだろ。みんなにはそれが分ぶん霊れい箱ばこだなんて言う必要はないからさ」
ハリーはロンとハーマイオニーを交互に見た。ハーマイオニーがヒソヒソ声で言った。
「ロンの言うとおりだわ。私たち、何を探すのかさえわからないのよ。みんなの助けが要るわ」
ハリーがまだ納得しない顔でいると、ハーマイオニーがもうひと押しした。
「ハリー、何もかも一人でやる必要はないわ」