レイブンクロー生は怯おびえて、互いに囁ささやき合っていた。すると何の前触まえぶれもなしに、扉とびらに向けて銃じゅうを発射はっしゃしたような大きな音が立て続けに聞こえてきた。
「アレクト あの方が到着して、もし俺おれたちがポッターを捕まえていなかったら。――マルフォイ一家の二の舞になりてえのか 返事をしろ」
アミカスは、力のかぎり扉を揺ゆすぶりながら大声でわめいた。しかし、扉は頑がんとして開かない。レイブンクロー生は全員後退あとずさりしていたし、中でもひどく怯えた何人かは、寝室に戻ろうとあわてて階段を駆かけ上がりはじめた。いっそ扉を吹き飛ばして、アミカスがこれ以上何かする前に「失神しっしん」させるべきではないかとハリーが迷っていると、扉の向こうでよく聞き慣れた別の声がした。
「カロー先生、何をなさっておいでですか」
「この――クソッたれの――扉から――入ろうとしているんだ」
アミカスが叫さけんだ。
「フリットウィックを呼べ あいつに開けさせろ、いますぐだ」
「しかし、妹さんが中にいるのではありませんか」マクゴナガル教授きょうじゅが聞いた。「フリットウィック先生が、宵よいの口くちに、あなたの緊急きんきゅうな要請ようせいで妹さんをこの中に入れたのではなかったですか たぶん、妹さんが開けてくれるのでは それなら城の大半の者を起こす必要はないでしょう」
「妹が答えねえんだよ、この婆ばばぁ てめえが開けやがれ さあ開けろ いますぐ開けやがれ」
「承知しょうちしました。お望みなら」
マクゴナガル教授は、恐ろしく冷たい口調で言った。ノッカーを上品に叩たたく音がして、歌うような声が再び尋たずねた。
「消失した物質はどこに行く」
「非存在に。つまり、すべてに」マクゴナガル教授が答えた。
「見事な言い回しですね」
鷲わしのドアノッカーが応こたえ、扉がパッと開いた。
アミカスが杖つえを振り回して扉から飛び込んでくると、残っていた数少ないレイブンクロー生は、矢のように階段へと走った。妹と同じように猫背のアミカスは、その青ぶくれの顔についている小さな目で、床に大の字に倒れて動かないアレクトを見つけた。アミカスは怒りと恐れの入り交じった叫び声を上げた。