「ガキども、何しやがった」アミカスが叫んだ。「誰がやったか白状するまで、全員『磔はりつけの呪文じゅもん』にかけてやる――それよりも、闇やみの帝王ていおうが何とおっしゃるか」
妹の上に立ちはだかって、自分の額ひたいを拳こぶしでバシッと叩きながら、アミカスが甲高かんだかい声で叫んだ。
「やつを捕まえていねえ。その上ガキどもが妹を殺しやがった」
「『失神しっしん』させられているだけですよ」
屈かがんでアレクトを調べていたマクゴナガル教授きょうじゅが、いらだちを抑えながら言った。
「妹さんはまったく何ともありません」
「何ともねえもクソもあるか」
アミカスが大声を上げた。
「妹が闇やみの帝王ていおうに捕まったら、とんでもねえことにならぁ こいつはあの方を呼びやがった。俺おれの闇の印が焼けるのを感じた。あの方は、俺たちがポッターを捕まえたとお考えにならぁ」
「ポッターを捕まえた」マクゴナガル教授の声が、鋭くなった。「どういうことですか 『ポッターを捕まえた』とは」
「あの方が、ポッターはレイブンクローの塔とうに入ろうとするかもしれねえって、そんでもって、捕まえたらあの方を呼ぶようにって、俺たちにそうおっしゃったのよ」
「ハリー・ポッターが、なんでレイブンクローの塔に入ろうとするのですか ポッターは私わたくしの寮りょう生せいです」
まさか、という驚きと怒りの声の中に、微かすかに誇ほこりが流れているのを聞き取り、ハリーは胸の奥に、ミネルバ・マクゴナガルへの愛情がどっと湧わいてくるのを感じた。
「俺たちは、ポッターがここに来るかもしれねえ、と言われただけだ」カローが言った。「なんでもへったくれも、ねえ」
マクゴナガル教授は立ち上がり、キラキラした目で部屋を眺ながめ回した。ハリーとルーナの立っている、まさにその場所を、その目が二度行き過ぎた。
「ガキどもに、なすりつけてやる」
アミカスの豚のような顔が、突然、ずる賢くなった。
「そうだとも。そうすりゃいい。こう言うんだ。アレクトはガキどもに待ち伏せされた。上にいるガキどもによ」
アミカスは星のちりばめられた天井の、寝室のある方向を見上げた。
「そいでもって、こう言う。ガキどもが、無理やり妹に闇の印を押させた。だから、あの方は間違いの報しらせを受け取った……あの方は、ガキどもを罰ばっする。ガキが二、三人減ろうが減るまいが、たいした違いじゃねえだろう」
「真実と嘘うそとの違い、勇気と臆病おくびょうとの違いにすぎません」
マクゴナガル教授の顔からすっと血が引いた。
「要するに、あなたにも妹さんにも、その違いがわかるとは思えません。しかし、一つだけはっきりさせておきましょう。あなたたちの無能の数々を、ホグワーツの生徒たちのせいにはさせません。私わたくしが許しません」