「何だと」
アミカスがずいと進み出て、マクゴナガル教授きょうじゅの顔に息がかかるほどのところまで無ぶ遠えん慮りょに詰め寄った。マクゴナガル教授は一歩も引かず、トイレの便座べんざにくっついた不快なものでも見るようにアミカスを見下ろした。
「ミネルバ・マクゴナガルよぅ、あんたが許すの許さないのってぇ場合じゃぁねえぜ。あんたの時代は終わった。いまは俺おれたちがここを仕切ってる。俺を支持しないつもりなら、つけを払うことになるぜ」
そしてアミカスは、マクゴナガル教授の顔に唾つばを吐はきかけた。
ハリーは「マント」を脱ぎ、杖つえを上げて言った。
「してはならないことを、やってしまったな」
アミカスがくるりと振り向いたとき、ハリーが叫さけんだ。
「クルーシオ 苦しめ」
死し喰くい人びとが浮き上がった。溺おぼれるように空中でもがき、痛みに叫びながらじたばたした。それから、本棚ほんだなの正面に激突げきとつしてガラスを破り、気を失ったアミカスはくしゃくしゃになって床に落ちた。
「ベラトリックスの言った意味がわかった」ハリーが言った。頭に血が上ってドクドク脈打っていた。「本気になる必要があるんだ」
「ポッター」
マクゴナガル教授が、胸元を押さえながら小声で言った。
「ポッター――あなたがここに いったい―― どうやって――」
マクゴナガル教授は落ち着こうと必死だった。
「ポッター、バカなまねを」
「こいつは先生に、唾を吐いた」ハリーが言った。
「ポッター、私は――それはとても――とても雄お々おしい行為こういでした――しかし、わかっているのですか――」
「ええ、わかっています」
ハリーはしっかりと答えた。マクゴナガル教授があわてふためいていることが、かえってハリーを落ち着かせた。
「マクゴナガル先生、ヴォルデモートがやって来ます」
「あら、もうその名前を言ってもいいの」
ルーナが「透明とうめいマント」を脱ぎ捨てて、おもしろそうに聞いた。二人目の反はん逆ぎゃく者しゃの出現に圧倒され、マクゴナガル教授はよろよろと後退あとずさりし、古いタータンチェックの部屋着の襟えりをしっかりつかんで、傍かたわらの椅い子すに倒れ込んだ。
「あいつを何と呼ぼうが、同じことだ」ハリーがルーナに言った。「あいつはもう、僕がどこにいるかを知っている」