ハリーはまだブツブツ言っているスラグホーンを無視してその場を去り、ルーナと二人でマクゴナガル教授のあとを走った。教授は廊下ろうかの真ん中で体勢を整え、杖つえを構えた。
「ピエルトータム――ああ、何たること フィルチ、こんなときに――」
年老いた管理人が、わめきながらひょこひょこと現れたところだった。
「生徒がベッドを抜け出している 生徒が廊下にいる」
「そうすべきなのです、この救いようのないバカが」マクゴナガルが叫さけんだ。「さあ、何か建設的なことをなさい ピーブズを見つけてきなさい」
「ピ――ピーブズ」フィルチは、そんな名前は初めて聞くというように言いよどんだ。
「そうです、ピーブズです、このバカ者が この四半世紀というもの、ピーブズのことで文句を言い続けてきたのではありませんか さあ、捕まえにいくのです。すぐに」
フィルチは明らかにマクゴナガル教授が分別を失ったと思ったらしかったが、低い声でブツブツ言いながら、背中を丸めてひょこひょこ去っていった。
「では、いざ――ピエルトータム ロコモーター すべての石よ、動け」
マクゴナガル教授が叫んだ。
すると、廊下中の像と甲冑かっちゅうが台座から飛び降おりた。上下階から響ひびいてくる衝しょう撃げき音おんで、ハリーは、城中の仲間が同じことをしたのだとわかった。
「ホグワーツは脅おびやかされています」マクゴナガル教授が叫んだ。「境界を警護けいごし、我々を守りなさい。我らが学校への務つとめを果たすのです」
騒々しい音を立て、叫び声を上げながら、動く像たちは雪崩なだれを打ってハリーの前を通り過ぎた。小さい像も、実物よりも大きい像もあった。動物もいる。甲冑は、鎧よろいをガチャガチャ言わせながら剣つるぎやら、棘とげのついた鎖玉くさりだまやらを振り回していた。
「さて、ポッター」マクゴナガルが言った。「あなたとミス・ラブグッドは、友達のところに戻り、大おお広ひろ間まに連れてくるのです――私わたくしはほかのグリフィンドール生を起こします」