パーシーは、口ごもって黙だまり込んだ。家族のほとんどがいるところに飛び込むとは、予想もしていなかったらしい。驚きのあまり長い沈黙ちんもくが続き、やがてフラーがルーピンに話しかけた。緊張きんちょうを和やわらげようとする、突とっ拍ぴょう子しもない見え透すいた一言だった。
「それで――ちーさなテディはお元気でーすか」
ルーピンは不意を衝つかれて、目をぱちくりさせた。ウィーズリー一家に流れる沈黙は、氷のように固まっていくようだった。
「私は――ああ、うん――あの子は元気だ」ルーピンは大きな声で言った。「そう、トンクスが一緒いっしょだ――トンクスの母親のところで」
パーシーとウィーズリー一家は、まだ凍こおりついたまま見つめ合っていた。
「ほら、写真がある」
ルーピンは、上着の内側から写真を一枚取り出して、フラーとハリーに見せた。ハリーが覗のぞくと、明るいトルコ石色の前髪まえがみをした小さな赤ん坊が、むっちりした両手の握り拳こぶしをカメラに向けて振っているのが見えた。
「僕はバカだった」パーシーが吠ほえるように言った。あまりの大声に、ルーピンは手にした写真を落としかけた。「僕は愚おろか者だった、気取った間抜けだった。僕は、あの――あの――」
「魔法省好きの、家族を棄すてた、権力欲の強い、大バカヤロウ」フレッドが言った。
パーシーはゴクリと唾つばを飲のんだ。
「そう、そうだった」
「まあな、それ以上正当な言い方はできないだろう」
フレッドが、パーシーに手を差し出した。
ウィーズリーおばさんはワッと泣き出してパーシーに駆かけ寄り、フレッドを押し退のけて、パーシーを絞しめ殺さんばかりに抱きしめた。パーシーは母親の背中をポンポン叩たたきながら、父親を見た。
「父さん、ごめんなさい」パーシーが言った。
ウィーズリーおじさんはしきりに目を瞬しばたたかせてから、急いで近寄って息子を抱いた。
「いったいどうやって正気に戻った、パース」ジョージが聞いた。
「しばらく前から、少しずつ気づいていたんだ」
旅行マントの端はしで、メガネの下の目を拭ぬぐいながら、パーシーが言った。
「だけど、抜け出す方法がなかなか見つけられなかった。魔法省ではそう簡単にできることじゃない。裏切り者は次々投獄とうごくされているんだ。僕、アバーフォースと何とか連絡れんらくが取れて、つい十分前に彼が、ホグワーツが一戦交まじえるところだと密ひそかに知らせてくれた。それで駆かけつけたんだ」