「さあ、こんな場合には、監かん督とく生せいたちが指し揮きを執とることを期待するね」ジョージが、パーシーのもったいぶった態度を見事にまねしながら言った。「さあ、諸君しょくん、上に行って戦おうじゃないか。さもないと大物の死し喰くい人びとは全部、誰かに取られてしまうぞ」
「じゃあ、君は、僕の義ね姉えさんになったんだね」
ビル、フレッド、ジョージと一緒いっしょに階段に急ぎながら、パーシーはフラーと握手あくしゅした。
「ジニー」ウィーズリーおばさんが大声を上げた。
ジニーは、仲直りのどさくさまぎれに、こっそり上にあがろうとしていた。
「モリー、こうしたらどうだろう」ルーピンが言った。「ジニーはこの部屋に残る。そうすれば現場にいることになるし、何が起こっているかもわかる。しかし、戦いのただ中には入らない」
「私は――」
「それはいい考えだ」
ウィーズリーおじさんが、きっぱりと言った。
「ジニー、おまえはこの『部へ屋や』にいなさい。わかったね」
ジニーは、あまりいい考えだとは思えないらしかったが、父親のいつになく厳きびしい目に出会って、うなずいた。ウィーズリー夫妻とルーピンも、階段に向かった。
「ロンはどこ」ハリーが聞いた。「ハーマイオニーはどこ」
「もう、大おお広ひろ間まに行ったに違いない」
ウィーズリーおじさんが振り向きながら、ハリーに答えた。
「来る途中で二人に出会わなかったけど」ハリーが言った。
「二人は、トイレがどうとか言ってたわ」ジニーが言った。「あなたが出て行って間もなくよ」
「トイレ」
ハリーは、「必要ひつようの部へ屋や」から外に向かって開いているドアまで急いで歩き、トイレの中を確かめた。空からっぽだった。
「ほんとにそう言ってた トイ――」
そのとき、傷痕きずあとが焼けるように痛み、「必要の部屋」が消え去って、ハリーは高い鍛鉄たんてつの門から中を見ていた。
両側の門柱には羽の生えたイノシシが立っている。暗い校庭を通して城を見ると、煌々こうこうと明かりが点ついていた。ナギニが両肩にゆったりと巻きついている。彼は、殺人の前に感じる、あの冷たく残忍ざんにんな目的意識に憑つかれていた。