そうやって、ヴォルデモートはまんまと、「灰色のレディ」から、失われた髪飾りの在あり処かを聞き出したんだ。遠く離れたその森まで旅をして、隠し場所から髪かみ飾かざりを取り戻したんだ。おそらくホグワーツを卒業してすぐ、ボージン・アンド・バークスで働きはじめるより前だったろう。
それに、その隔かく絶ぜつされたアルバニアの森はそれから何年かあとになって、ヴォルデモートが十年もの長い間、目立たず、邪魔じゃまされずに潜ひそむ場所が必要になったとき、すばらしい避ひ難なん場ば所しょに思えたのではないだろうか
しかし、髪飾りがいったん貴重きちょうな分ぶん霊れい箱ばこになってからは、そんなありきたりの木に放置されていたわけではない……違う。髪飾りは密ひそかに、本来あるべき場所に戻されたのだ。ヴォルデモートが戻したに違いない――。
「――ヴォルデモートが就職を頼みにきた夜だ」ハリーは推理すいりし終わった。
「え」
「あいつは、髪飾りを城に隠した。学校で教えさせてほしいと、ダンブルドアに頼みにきた夜に」
声に出して言ってみることで、ハリーにはすべてがはっきりわかった。
「あいつは、ダンブルドアの校長室に行く途中か、そこから戻る途中で髪飾りを隠したに違いない ついでに、教きょう職しょくを得る努力をしてみる価値はあった――それがうまくいけば、グリフィンドールの剣つるぎも手に入れるチャンスができたかもしれなかったから――ありがとう。ありがとう」
当とう惑わくしきった顔で浮かんでいるレディをそこに残したまま、ハリーはその場を離れた。玄げん関かんホールに戻る角を曲がったとき、ハリーは腕時計を確かめた。午前時まであと五分。最後の分霊箱が何かはわかったものの、それがどこにあるかは、相変わらずさっぱりわからない……。
何世代にわたって生徒が探しても見つけられなかったということは、たぶん髪飾りはレイブンクローの塔とうにはない――しかし、そこにないなら、どこだ 永久に秘密であり続けるような場所として、トム・リドルは、ホグワーツ城にどんな隠し場所を見つけたのだ
必死に推理しながらハリーは角を曲がったが、その廊下ろうかを二、三歩も歩かないうちに、左側の窓が大だい音おん響きょうとともに割れて開いた。ハリーが飛び退のくと同時に、窓から巨大な体が飛び込んできて反対側の壁かべにぶつかった。何だか大きくて毛深いものが、キュンキュン鳴きながら到着したばかりの巨体から離れて、ハリーに飛びついた。