「ハグリッド」
ひげもじゃの巨体が立ち上がったのを見て、ハリーは、じゃれつくボアハウンド犬のファングを引き離そうと苦戦しながら、大声で呼びかけた。
「いったい――」
「ハリー、ここにいたか 無事だったんか」
ハグリッドは身を屈かがめて、肋ろっ骨こつが折れそうな力で、ちょっとだけハリーを抱きしめ、それから大破した窓辺まどべに戻った。
「グロウピー、いい子だ」
ハグリッドは窓の穴から大声で言った。
「すぐ行くからな、いい子にしてるんだぞ」
ハグリッドの向こうの夜の闇やみに、炸さく裂れつする遠い光が見え、不気味な、泣き叫さけぶような声が聞こえた。時計を見ると、午前時を指していた。戦いが始まっていた。
「おーっ、ハリー」
ハグリッドがあえぎながら言った。
「ついに来たな、え 戦うときだな」
「ハグリッド、どこから来たの」
「洞ほら穴あなで、『例のあの人』の声を聞いてな」ハグリッドが深しん刻こくな声で言った。「遠くまで響ひびく声だったろうが 『ポッターを俺おれ様さまに差し出すのを、真夜中まで待ってやる』。そんで、おまえさんがここにいるに違ちげえねえってわかった。何がおっぱじまっているかがわかったのよ。ファング、こら、離れろっちゅうに。そんで、加わろうと思ってやってきた。俺とグロウピーとファングとでな。森を通って境界を突破したっちゅうわけよ。グロウピーが、俺とファングを運んでな。あいつに、城で降おろしてくれっちゅうたら、窓から俺を突っ込んだ。まったく。そういう意味じゃぁなかったんだが。ところで――ロンとハーマイオニーはどこだ」
「それは――」ハリーが言った。「いい質問だ。行こう」
二人は廊下ろうかを急いだ。ファングはその傍かたわらを飛び跳ねながら従ついてきた。廊下ろうかという廊下から、人の動き回る音が聞こえてきた。走り回る足音、叫さけぶ声。窓��ーツの戦い(10)