アバーフォースはフンとうなって、急いでハリーと反対方向に去っていった。
あなたのお兄さんなら、そんなことは決してしなかった……そう、それは本当のことだ。ハリーは再び走り出しながら、そう思った。長年スネイプを擁護ようごしてきたダンブルドアだ。生徒を人質に取ることなど、決してしなかっただろう……。
最後の曲り角を横よこ滑すべりしながら曲がったとたん、ロンとハーマイオニーが目に入った。安心感と怒りで、ハリーは叫び声を上げた。二人とも両腕一杯に何か大きくて曲がった汚い黄色い物を抱え、その上ロンは箒ほうきを小脇こわきに挟んでいた。
「いったい、どこに消えていたんだ」ハリーが怒ど鳴なった。
「『秘密ひみつの部へ屋や』」ロンが答えた。
「秘密の――えっ」
二人の前でよろけながら急きゅう停てい止しして、ハリーが聞き返した。
「ロンなのよ。全部ロンの考えよ」
ハーマイオニーが、息を弾はずませながら言った。
「とってもすごいと思わない あなたが出ていってから、私たちあの『部屋』に残っていて、私がロンに言ったの。ほかの分ぶん霊れい箱ばこを見つけても、どうやって壊こわすの まだカップも片付けていないわ そう言ったの。そしたらロンが思いついたのよ バジリスク」
「いったいどういう――」
「分ぶん霊れい箱ばこを破壊はかいするためのものさ」ロンがさらりと言った。
ハリーは、ロンとハーマイオニーが両腕に抱えているものに目を落とし、それが死んだバジリスクの頭蓋ずがいからもぎ取った巨大な曲がった牙きばだと気づいた。
「でも、どうやってあそこに入ったんだ」
ハリーは、牙とロンを交互に見つめながら聞いた。
「蛇語へびごを話さなきゃならないのに」
「話したのよ」ハーマイオニーが囁ささやくように言った。「ロン、ハリーにやってみせて」
ロンは、恐ろしい、喉のどの詰まるようなシューシューという音を出した。
「君がロケットを開けるとき、こうやったのさ」ロンは申し訳なさそうに言った。「ちゃんとできるまでに、何回か失敗したけどね、でも」ロンは謙けん遜そんして肩をすくめた。「僕たち、最後にはあそこに着いたのさ」
「ロンはすーばらしかった」ハーマイオニーが言った。「すばらしかったわ」
「それで……」
何とか話に追ついていこうと努力しながら、ハリーが促うながした。
「それで……」
「それで、分霊箱、もう一いっ丁ちょ上あがりだ」
そう言いながらロンは、上着の中から壊こわれたハッフルパフのカップの残ざん骸がいを引っ張り出した。
「ハーマイオニーが刺さしたんだ。彼女がやるべきだと思ったのさ。ハーマイオニーは、まだその楽しみを味わってなかったからね」
「すごい」ハリーが叫さけんだ。
「たいしたことはないさ」
そう言いながらも、ロンは得意げだった。
「それで、君のほうは、何があった」