以前に一度入ったときに、この部屋で見た覚えのある品物を探して、ハリーはだんだん迷路めいろの奥深く進んでいった。自分の呼吸がはっきり聞こえた。そして――魂たましいそのものが震えるような気がした――見つけた。すぐそこに、ハリーが古い魔法薬の教科書を隠した、表面がボコボコになった古い戸棚とだなが見え、その上に、痘痕あばた面づらの石像が埃ほこりっぽい古い鬘かつらを被かぶり、とても古そうな黒ずんだティアラをつけている。
まだ三メートルほど先だったが、ハリーはもう手を伸ばしていた。そのとき、背後で声がした。
「止まれ、ポッター」
ハリーはどきりとして振り向いた。クラッブとゴイルが杖つえをハリーに向け、肩を並べて立っていた。にやにや笑う二人の顔の間の小さな隙間すきまに、ハリーはドラコ・マルフォイの姿を見つけた。
「おまえが持っているのは、僕の杖だぞ、ポッター」
クラッブとゴイルの間から、杖をハリーに向けて、マルフォイが言った。
「いまは違う」
ハリーはサンザシの杖をぎゅっと握り、あえぎながら言った。
「勝者が杖を持つんだ、マルフォイ。おまえは誰から借りた」
「母上だ」ドラコが言った。
別におかしい状況ではないのに、ハリーは笑った。ロンの足音もハーマイオニーのも、もう聞こえなくなっていた。髪かみ飾かざりを探して、二人ともハリーの耳には届かない距離まで走っていってしまったらしい。
「それで、三人ともヴォルデモートと一いっ緒しょじゃないのは、どういうわけだ」
ハリーが問いかけた。
「俺おれたちはご褒美ほうびをもらうんだ」
クラッブの声は、図体のわりに驚くほど小さかった。ハリーはこれまで、クラッブが話すのをほとんど聞いたことがなかった。クラッブは、大きな菓か子し袋ぶくろをやると約束された幼い子どものような笑いを浮かべていた。
「ポッター、俺たちは残ったんだ。出ていかないことにした。おまえを『あの人』のところに連れていくことに決めた」
「いい計画だ」
ハリーは誉ほめるまねをして、からかった。あと一歩というときに、まさかマルフォイ、クラッブ、ゴイルに挫くじかれようとは。ハリーはじりじりと後あと退ずさりして、石の胸像の頭にずれて載のっている分ぶん霊れい箱ばこに近づいた。戦いが始まる前に、それを手に入れることさえできれば……。