「ところで、どうやってここに入った」三人の注意を逸そらそうとして、ハリーが聞いた。
「僕は去年、ほぼ一年間『隠かくされた品の部へ屋や』に住んでいたようなものだ」マルフォイの声はピリピリしていた。「ここへの入り方は知っている」
「俺おれたちは外の廊下ろうかに隠れていたんだ」ゴイルがブーブーうなるような声で言った。「俺たちはもう、『目くろます術じゅつ』ができるんだぞ」ゴイルの顔が、間抜けなにやにや笑いになった。「そしたら、おまえが目の前に現れて、髪かみぐさりを探してるって言った 髪ぐさりってなんだ」
「ハリー」
突然ロンの声が、ハリーの右側の壁かべの向こうから響ひびいてきた。
「誰かと話してるのか」
鞭むちを振るような動きで、クラッブは十五、六メートルもある壁に杖つえを向けた。古い家具や壊こわれたトランク、古本やローブ、そのほか何だかわからないガラクタが山のように積み上げられた壁だ。そして叫さけんだ。
「ディセンド 落ちろ」
壁がぐらぐら揺ゆれ出して、ロンのいる隣となりの通路に崩くずれ落ちかかった。
「ロン」
ハリーが大声で呼ぶと、どこか見えないところからハーマイオニーの悲鳴が上がり、不安定になった山から壁の向こう側に大量に落下したガラクタが、床に衝突しょうとつする音が聞こえた。ハリーは杖を壁に向けて叫んだ。
「フィニート 終われ」
すると壁は安定した。
「やめろ」
呪じゅ文もんを繰り返そうとするクラッブの腕を押さえて、マルフォイが叫んだ。
「この部屋を壊こわしたら、その髪かみ飾かざりとやらが埋まってしまうかもしれないんだぞ」
「それがどうした」クラッブは腕をぐいと振りほどいた。「闇やみの帝てい王おうがほしいのはポッターだ。髪ぐさりなんか、誰が気にするってんだ」
「ポッターは、それを取りにここに来た」
マルフォイは、仲間の血の巡りの悪さにいらいらを隠せない口調だった。
「だから、その意味を考えろ――」
「『意味を考えろ』だぁ」
クラッブは狂きょう暴ぼう性せいをむき出しにして、マルフォイに食ってかかった。
「おまえがどう考えようと、知ったことか ドラコ、おまえの命令なんかもう受けないぞ。おまえも、おまえの親父も、もうおしまいだ」
「ハリー」ロンが、ガラクタの壁の向こうから再び叫んだ。「どうなってるんだ」
「ハリー」クラッブが口まねした。「どうなってるんだ――動くな、ポッター クルーシオ 苦しめ」