ハリーは息を呑のみ、意識を引き戻して目を開けた。同時に、甲高かんだかい叫さけび声やわめき声、打ち合いぶつかり合う戦いの喧騒けんそうが、ワッと耳を襲おそった。
「あいつは『叫さけびの屋敷やしき』にいる。蛇も一緒で、周囲を何かの魔法で守られている。あいつはたったいま、ルシウス・マルフォイにスネイプを迎えにいかせた」
「ヴォルデモートは、『叫びの屋敷』でじっとしているの」ハーマイオニーは怒った。「自分は――自分は戦いもせずに」
「あいつは、戦う必要はないと考えている」ハリーが言った。「僕があいつのところに行くと考えているんだ」
「でも、どうして」
「僕が分ぶん霊れい箱ばこを追っていることを知っている――ナギニをすぐそばに置いているんだ――蛇に近づくためには、僕があいつのところに行かなきゃならないのは、はっきりしている――」
「よし」ロンが肩を怒らせて言った。「それなら君は行っちゃだめだ。行ったらあいつの思うつぼだ。あいつはそれを期待してる。君はここにいて、ハーマイオニーを守ってくれ。僕が行って、捕まえて――」
ハリーはロンを遮さえぎった。
「君たちはここにいてくれ。僕が『マント』に隠れて行く。終わったらすぐに戻って――」
「だめ」ハーマイオニーが言った。「私が『マント』を着て行くほうが、ずっと合理的で――」
「問題外だ」ロンがハーマイオニーをにらみつけた。
ハーマイオニーが反論しかけた。「ロン、私だってあなたと同じぐらい力が――」そのとき、階段のいちばん上の、三人がいる場所を覆おおうタペストリーが破られた。
「ポッター」
仮面をつけた死し喰くい人びとが二人、そこに立っていた。その二人が杖つえを上げきらないうちに、ハーマイオニーが叫さけんだ。
「グリセオ 滑すべれ」